分野が変われば常識も変わる

2月中旬以降毎週末、部屋探し・契約・引っ越しと、京都と東京の往復で全く休みが取れていなかったので、今日もちょっと研究室に行くつもりだったが、疲労が蓄積していてダウン。動けないので1週間さぼっていた日記を更新したりする。

夕方、腰の血行をよくしようと思ってスーパー銭湯に行ったのだが、入れ違いで夜 [twitter:@shirayu] くんたちもスーパー銭湯と夕食に誘ってくれた。みんな出張のあとは温泉でゆっくりしようと思うのは同じらしい (笑) 自分はまだ回数券が4枚あるのだが、奈良にいる間毎日行ってようやく使い切る感じか…… (余ったら誰かにあげればいいだけだけど)。

妻の博士論文がやっと合格したらしい。博士後期課程への進学は自分と同時だったので、かれこれ6年がかりである。長い道のりであった。博士論文に取り組んだ時期と結婚してからの時期が完全に重なっているので、我々の結婚生活も博士論文を抜きには語ることができない。書類的な手続きがあるのでまだ気は抜けないが、ひとまずほっとした。

自分の分野と妻の分野はどうやら順番が違うようで、自分の分野 (工学、特に情報系) は論文誌あるいは査読付き国際会議に投稿した数編の論文をベースに博士論文を書く (博士論文は既発表の研究内容) のに対し、妻の分野 (医学) は博士論文をベースに論文誌に投稿する (博士論文は未発表の研究内容) ものらしい。これがどういう違いを産むかというと、工学系では論文誌あるいは査読付きの国際会議に論文をアクセプトしてもらうためにしんどい思いをする (匿名の査読を乗り越えなければならない) のに対し、医学系では博士論文の審査が論文誌の査読並みかそれ以上に厳しいので、博士論文の審査委員会にアクセプトしてもらうためにしんどい思いをする、というわけである。立場の違いなのでどちらがよいというものではないのだが、公聴会を開催することが博士論文の合格を全く意味しない、というのはちょっとしたカルチャーショックだった (妻のケースでは、公聴会を開催してから合格まで1年以上経っているが、妻のいる研究室では公聴会後 major revision が入って審査延長願を提出するのは稀ではない、というかむしろそういう人のほうが多いようだ)。

というわけで、博士論文が合格したら次は論文誌に投稿、となるわけだが、指導教員が「博士論文をベースに corresponding author をわたしにして投稿しておいて」と言っているそうで、これもカルチャーショックである (ちなみに、妻の所属する研究科では、博士論文の審査委員に指導教員は入ることができない)。

論文を共著で書くとき基本的には貢献度順に並べるので (数学のようにアルファベット順に並べるところもあるそうだが)、筆頭著者がいちばん貢献度が高いというのはだいたい共通しているが、corresponding author というのは (情報分野ではそもそも明示することが少ないと思うが) 論文の内容の問い合わせ先を示すもので、分野によっては筆頭著者と同程度の重みをもっている、つまり業績としてカウントされる (単なる雑用係だと見なされる分野もあるようだが)。工学系でも、修士の学生が卒業して企業に就職し、研究を続けない、といった場合は教員を corresponding author にして投稿することはよくあるが、博士の学生、しかも学位取得後大学で教員として働く意志がある人に対して、教員を corresponding author にして投稿する、というのはないんじゃないかなぁ。

研究にかかる費用も工学系では自腹はありえないという認識だが、妻の研究室では (人文系もそうだと思うが) 学生の研究は全額自腹が基本だし、違う分野の話を聞くと「大学ってこういうものだ」というのが人によって違うということがよく分かり、新鮮である。