入力メソッドの研究開発は日本が世界をリードできるテーマ

3日目になるとだいぶ現地にも慣れてくる。@tettsyun くんたちと同じバスだったようだが、彼らは3日目しか来ていないようで、日帰りだときついんじゃないかな〜と思う半面、5日間もいると日常業務が完全に滞ってしまうので(メールも満足に読めない)、今年は外に出かける回数を意識的に減らさないと仕事にならない、と思ったりもする。

3日目の目玉はなんといってもテーマセッション「日本語入力における言語処理」。裏で「不自然言語処理 枠に収まらない言語表現の処理」もあり、そちらも大盛況だったようだが、IMEに関するテーマで60人以上人が集まるということが驚き。もっとも人が多かったのは@taku910 さんの発表だったが、これだけ日本語入力が盛り上がりつつあるのは Google 日本語入力(+Mozc)の影響が極めて大きいと思うので、ありがたいことである。

ちなみに自分の原稿は こちら (スライドは写真をいろんなところから持ってきたりしているのでちょっと公開を見合わせている)。質疑のときは @kidayasuo さんに助けていただいたり。パネル討論でも評価の問題 (BLEU や文字誤り率などで改善が見られなくてもユーザの評価は上がっている、ということがある) は大きく取り上げられていたが、こういうユーザがいる研究は評価尺度自体も考えなければならない、というのは最近思っていたこと(自分が学部のころ考えていた技術哲学のテーマでもあるが)で、IME 開発者の人たちはみんな同じことを考えていたので一安心。

Google, Microsoft, Apple, JustSystem, IBM 等いろんな企業の IME 開発者が集まり、そして研究発表し、@zelchmixijp さんたち大学の研究者も含めてディスカッションでき、というのはすごい機会だったなぁと嘆息するばかり。今年でないとこういう集まりは開けなかったと思うし、こういう時代に研究できて幸せだなぁと思うのであった。

そしてもう一つニュース、今年の IJCNLP というアジア圏で最大の自然言語処理に関する国際会議にて、Workshop on Advances in Text Input Methods というワークショップの開催が決定。自分もプログラム委員として参加させてもらっているが、入力メソッドに関する国際会議があるというのは画期的なことだし、この分野は日本(語)が他の国(言語)と比較して大幅に進んでいるところでもあるし、日本語に閉じない応用を考えて研究していれば、世界水準の研究を率いていけるテーマであると思う。「枯れた」と思っている技術もまだまだ研究のネタはあるし、新しい需要が見えてくる、というのは実アプリケーションを作っていて感じる大きな魅力でもあり、これからまた入力メソッドの研究・開発が盛んになっていくとよいなと思っている。

夜は明日のワークショップの打ち合わせ。@kmura さんと @iwatasusumu さんと影浦さんと同じテーブルでお話。影浦さんとお話したのは初めてだったが、感覚が素敵な方だと思う。間違ったことは間違っていると言える、というか。「若い人たちには自分にない感覚を持っていると思うので、意識的に若い人たちと話すようにしている」と自分が言うと、「あえて相手のことを考えることはないんじゃないですか。自分が「これは自分がいちばん情熱を持っている」ということを話せばいいと思う」(表現はこのままではない) とおっしゃっていて、確かにそうだなあ、自分で「これはいちばん情熱を持っている」と自信を持って言える内容がない、ということから「相手のことを知りたい、相手に合わせたい」と思うのかも、と考えさせられる (他にもいろいろ)。他にも今回の言語処理学会でいろんなことがあったが、今回あとで思い返していちばん印象に残るのはこの時間だと思う。

帰りは @mhagiwara さん、@kmura さんと @hasegawadai さんとでタクシー。楽天技研のお話を聞いたり、北大の荒木研究室のお話をお伺いしたり。楽天技研もがんばっているなぁ、と思うことしきり (自然言語処理の活動にこんなに人を投入できるはすごい)。