Amazon Kindle DX で自炊したい

Amazon Kindle DX を買ったという話は以前書いたが、当初の目的としていた論文読みデバイスとしてはいまいちだったので、結局帰国してからずっと使っていなかった。最近 Engadget で ビジネススクールがKindle DXを導入、講義には不向きと結論 という記事が出ていたが、自分も概ね同意見である。

「次の新入生にKindle DXを薦めますか?」という問いに、利用した75~80%の学生は「薦めない」と回答しました。不評の理由として、同校のMBAディレクター Michael Koenig氏は「紙の代替として考えた場合、ページ、資料、チャート、グラフを簡単に切り替えることができない」点を挙げています。
[...]
面白いのは「個人用の読書端末としてKindle DXを薦めますか?」という質問になると、学生の90~95%が「薦める」と答えたこと。「結果から私が言えることは、電子書籍や雑誌、新聞を買って読むぶんには、アマゾンはとてもよくデザインされた製品を作ったということです」とKoenig氏。

後半部分に興味を持ったのと、今週 iPad も出るし、id:syou6261 さんが Kindle を使いこなしていてうらやましかったので、自分も取り出して設定してみた(笑) 自分の買ったのは去年なので、今年の1月に出た Global Wireless 版ではなく、US 内でないと無線につながらないバージョンなのだが、一応 USB 経由で jpg なり pdf なりを転送すれば使えるのである。

まず日本語のフォントがないと画像にしたり PDF に日本語フォントを埋め込んだりしないといけないし、PDF のタイトルも文字化けしてしまうので、Kindle のフォント入れ替え対応フォントパックからフォントをインストール。Kindle のバージョンが古いのでいまいち当たるかどうか不安だったが、Kindle DX US 版の人は http://www.amazon.com/update_kindle_dx.bin にアクセスすると最新版のファームウェアが手に入るので、これを USB で接続した Kindle のルートディレクトリに置き、Menu → Settings → Menu → Update Your Kindle とすれば手動でアップデートできる。(5月末に2.5が出るらしいが、フォント周りが変わったそうなので、現在の最新版の2.3.3にしてみた)

メニューなどの英語のフォントが VL ゴシックになり、デフォルトの英語のフォントと比べるといまいちではあるが、日本語を読む分には問題なし。むしろなぜいままでこうしなかったのかと……。

ちなみに「自炊」というのは自分でご飯を作ることなのだが、「自分で本をスキャンする」ということを「自炊」と言うらしい。書類とかなんだとかを取り込むため、年度末

FUJITSU ScanSnap S1500M FI-S1500M (Macモデル)

FUJITSU ScanSnap S1500M FI-S1500M (Macモデル)

がほしかったのだが、本を読みたいだけなら青空キンドル青空文庫から PDF を生成して Kindle で読むのでいいような気がする。

実際 Kindle DX にこれで生成した PDF を入れて「蜘蛛の糸」と「舞姫」を読んでみたのだが、かなり読みやすい! 

舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0)

舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0)

そもそも論文を読むときに Kindle が向いていないのは、論文には線を引いたり書き込んだり、リファレンスとイントロを行ったり来たりしながら読むのに、ページめくり(切り替え)が遅いし、PDF にはメモも取れないだからなのだが、自分は小説を読むときは線も引かないし書き込みもしないし、当然ながら行ったり来たりして読んだりすることもない(どこまで読んだかしおりを挟みたいことはあるが、Kindle は PDF でもしおりを挟むことはできる)。

Global Wireless 版は日本を含め世界各国どこからでも追加の料金なしで青空文庫のページから直接 PDF を生成できるらしいので、US 版だとそれができないのが残念だが、1冊数百円の文庫に入っているような作品を何百冊分入れることができるので、それを考えると$489でも価値はあるかな。(いまのいままでほとんど文鎮と化していたので、誰かにあげようかと思っていた) ときどき思いついたように小説とかエッセイを読むには最適(電池の持ちが非常によいのもメリット)なデバイスだと思う。

恥ずかしながら「舞姫」を読んだのはこれが初めてだった(Kindle の PDF で30ページほどだったので、読んでみようという気になった)のだが、こんな身も蓋もない話だったのね……(ドイツに留学した主人公が現地の少女を身ごもらせたのにそのまま帰った、というあらすじだけ知っていた)。主人公外道すぎないか? 舞姫先生は語るでは好意的に書かれている(鴎外があえて自虐的に書いた、としている)が、それにしてもこれは世の中の女性陣が見たら「フザケンナ」と激怒しそうである。最後の数ページの展開に本当に唖然とするばかりである。

森鴎外は医者なのだが、先日慈恵医大の医師が交際相手(二股)の子どもを堕ろすために子宮収縮剤を不正に入手し、相手の同意なしに使ったとして逮捕されていたニュースを聞いたときも、あきれてものが言えなかった。(ちなみにこちらの医師はこの数日後に別の女性と結婚している) いまどきの設定で「舞姫」を作るなら、主人公はこんな感じなんだろうなー