クラウドの技術はパブリックになるべき?

JTPA 8月のギークサロン「小池良次氏とクラウド(騒動)について語る」 --書籍「クラウド」にまつわる四方山話--に行ってきた。仕事(?)柄大規模データを扱うこともあり、クラウドは他人事ではないので内容には興味津々であった。

とはいえ行ってみるとどちらかというと出版に関する話とかがクローズアップされ、漫談のような感じで予想とは違ったかなー。自分もちょっと質問してみたのだが結局質問には答えてくれず、うやむやにされてしまったし、ちょっと肩すかし感がある。まあ、質疑応答で参加者のコメントのほうが貴重な情報が入っているのはよくあることだし、自分も参加者の人のコメントが一番勉強になった。ここでしか聞けないような話もあったので、トータルとしては行ってよかった。

クラウドに関する気持ちを書いておくと、たぶん Google とか Amazon とか Microsoft とか Apple といったような少数の超大企業がインフラを独占し、他の企業が全く参入する余地がなくなると思う(というかほとんどそうなっている)のだが、そういう企業はユーザのデータに自由にアクセスできてしまい、しかも実は大規模なデータを処理する技術があればかなり貴重なデータとしてマイニングできてしまうので、そういうことができる企業とできない企業とで外からは見える以上にものすごく差が開いてしまい、後で追いつこうと思っても追いつけないという状況になるだろう。

これがどこまで問題かというのは判断が分かれるところであり、平和ないまならたぶん問題はないが、ひとたび「戦時中」となるとなにが起こるか未知数であり、やっぱりデータを持っている企業(の属する国)とそれ以外とで情報の断絶が起きる可能性もあるし、従来型の「戦争」なんてのは今後起きないだろうという見方もあるとは思うが、安全側に倒すとすると、そういう事態になってもだいじょうぶなように国策としてクラウドを推進するのは(馬鹿げていると思う人が多数いたとしても)あながち間違ってはいないんじゃないかな。

検索エンジンでも「日の丸検索エンジン」と言って国策で検索エンジンのインフラを作るべきだと始めたの、無駄だとか馬鹿じゃないのと言う人が多かったが、文科省経産省総務省とで横の連絡がなく独立に同じようなことをやるのは全くもって馬鹿だと思うが、やろうとしていることはそんなに的を外したものではないというのが自分の意見。検索エンジンほど個人情報が流出するものはないし、この技術(の運用)は外に任せているとなにかあったとき大変なことになりかねないので、完全に全部自分でやる必要はないが、いつ本丸と切り離されても自分たちで再度構築できるくらいの技術力は維持しておく必要があると思うし、クラウドのように巨大なシステムのメンテナンスは経験やノウハウがなくて突然できるものではない(データセンター立てるだけでも時間かかるし)ので、そういうノウハウを巨大企業に独占されていると将来的に困ったことになってもおかしくない。

いま使っているアプリケーションだって全部海外製だし、国内のものなんてないでしょう、というのも分かるのだが、「クラウド」の怖いところはデータが全部サーバ側にある(ここ、自分は保守的な考え方なんだとは思う)ので、サーバ側でデータを如何様にでも処理できてしまう、という点である。もちろん中身が読まれるからプライバシー的にどうなのよ、という問題は当然あるのだが、それよりは「統計的にしか処理しませんので安心です」と言う割には統計的に処理するだけでもかなりのことができてしまい、その技術や知識がそういう企業にしか蓄積されないのを自分は危惧している。運用する人が全員善人だったらよいだろう、とみんな思うかもしれないが、全員善人でよかれと思ってやっていても、結果的にまずいことに荷担している可能性もあるわけで、その危険性は意識しておいた方がいいように思う。

とはいえみなさんに Google とかなんだとか使わないでもらいたいわけではなく、ばしばし使ってどんどん便利な世の中になっていってもらいたいと思っているので、誤解されたくはないのだが……。そう思うと、この流れが加速して技術が発展するのはよいことと自分は考えているが、そのデータやノウハウは特定の国や企業が独占しないで公知の技術としてみんなが使えるようになっていればいい、ということかのかな、と思った。検索エンジンの技術は割と公知の技術になっている(新規参入の企業でも、シェアを取るのは難しいが、それなりの精度の検索エンジンを短期間に作ることができる)ので、あえて日の丸検索エンジンは作らなくていいと思う ;-p