企業人が論文書くのは大変

今回言語処理学会の年次大会には筆頭著者で書く論文はないのだが、shimpei-m くんが筆頭著者の論文に共著者として入っているので、年末くらいから論文のやりとり(こちらで PDF にコメントつけて送り返したりとか、メールでコメントしたりとか)をしていた。提出〆切は12日なのだが、そもそも12日も祝日ということで、企業人の彼は休日出勤になってしまうので、少しずれ込んでしまって心苦しかったが、なんとか提出したようである。お疲れさまでした。

特に年明けは他の業務も忙しかったようで、負荷をかけてしまって悪いなぁと思いつつ、内容はそれなりになるようにけっこう細かいところまでコメントしてしまった気がする。

結局1日1往復くらいで数えてみたら13往復しているのだが、コメントするほうもこれくらいコメントするとなかなか満足感があってよい。shimpei-m くんの話では「こんなにコメントついた PDF 初めて見ました」と言われたとか言われていないとか……(笑)

実はこれまで先輩や先生方から論文を書く指導をみっちり受けたことはあるのだが、自分が逆の立場になって誰かの論文をしっかり見た経験はなかった(masahiko-h くんみたく直接面倒見ていない人の論文に対してコメントしたりはしたことがあるが、基本的に研究絡んでないのでそこまで突っ込んで言えない)ので、いい経験になった。特に自分は(指導教官がプロジェクト型の研究をしていて後輩の面倒を見させるといった形でやらされるのではなく、)せざるを得ない状況ではなかったし、割と自由な立場で仕事できたのもよかったんだと思う(いや、彼が自由な立場であったかどうかは分からないが……)。

ただ自分が毎日びっしり真っ赤になった論文の添削受けて翌日反映して、というサイクルを回すことができたのは、1日論文にかかりっきりになって書いていい状況だった(NAIST にいれば当然そうだが、Microsoft Research でのインターンシップ中も身分はリサーチインターンだったので、ずっとサーベイとか実験とか論文書いたりとかしていてよかった)からこそだと思うので、それ以外の業務も普通にある中でがんばって書いている、というのは並大抵のことではないんだな、と感じる。

IBM の研究所の人の話では「論文の〆切が迫っていても、仕事を頼まれたら断れないので、論文よりそちらを優先せざるを得ない」と聞いたことがある(人によるのかもしれないけど……)が、基礎研究所ですらそうだとすると、いわんや論文書くことがメインではない企業をや、という感じである。まあ、逆に言うと、研究所所属でもないのにこうやって論文を書かせてくれるという意味で、Yahoo! Japan は割と研究について理解がある、ということなのかもしれない。

ちなみに今年の言語処理学会年次大会の協賛は毎日新聞Yahoo! である。去年は毎日新聞Google、一昨年は毎日新聞Microsoft Research と Google、2006年は GoogleYahoo!毎日新聞Microsoft Research である(それ以前は Web に情報がないので分からない)。こうして見ると毎日新聞(日本語の自然言語処理でもっともよく使われているコーパス、京都テキストコーパス毎日新聞の記事である)以外はそれぞれ Google が3回 Yahoo!Microsoft が2回ずつであり、2006年はもっとも協賛が多かったが、それ以降先細りしているような……。確かに協賛しても効果が見えにくいというきらいはあるけれども、研究に協力するのはよいことだ、という合意が企業の中でなくなってくると厳しいなぁ。