父親の苦労を知った5年間

父がこの3月で定年退職したので、息子夫婦・孫たちが全員揃って退職記念の会。瑞鳳という懐石料理のお店を弟が予約してくれたのだが、「瑞鳳」で検索すると意図と違うものがトップに表示される(棒読み)。

実は一番下の弟と兄はそれぞれ結婚式をしなかったので、兄弟が全員同時に集まったことがこれまでなく、これが初めての顔合わせになる(弟夫婦に関しては式場も決めて顔合わせもしたりしたのだが、親族にご不幸があったりなんだりして、延ばし延ばししているうちに消えてしまった)。自分たちは兄弟夫婦全員と個別の機会に会ったりしているのだが(今や実家にもっとも近いところに住んでいるので)、兄夫婦と弟夫婦は初対面ではなかろうか……。

父は43年間働いてきたらしく、自分が子どものころは全く家にいなかったので父のことを意識することもなかったのだが、自分が仕事をして子育てを始めて改めて考えてみると、43年間ほとんど大病もせず、事故にも遭わず、酒やアルコールに溺れることもなく、淡々と働いてきた、というのはすごいことだと思う。自分は教員として働き始めて5年間が過ぎたところだが、あと30年後というのは全く想像がつかない(30年後には引退し、科学史・科学哲学を勉強し直して、博士号を取得して雑文を書いていきたいとは思っているが)。

働き盛りのころは平日は毎日朝7時に家を出て、夜日付が変わってから帰宅(会社にいる時間は1日15時間くらい?)、という感じだったが、そもそも今の自分は朝8時過ぎに家を出て、帰宅するのは18時半(大学にいる時間は1日7時間)なので、どう考えてもそんなに仕事をしたらすぐに身体を壊してしまいそうである。

よくよく考えると、我々は夫婦で1日合計15時間働き(ここまで5年間自分の方がたくさん仕事をさせてもらってきたので、今は妻に仕事時間を取ってもらっている。)、家事育児を夫婦で分担しているのだが、うちの両親はそれを夫婦で分業していたという計算になる。それぞれの専門性は上がるのはよいことだと思うが、なにかあったときのバックアップが難しいので、冗長化のためにも仕事も家事育児も夫婦で分担するのが安心安全である。

研究の世界では結果が全てなので、専業主婦(主夫)のサポートを受けて研究に集中するのが研究的にはベストなのかもしれないが(漫画家でも、妻が売れっ子で夫が主夫になってマネージメントから食事まで作る、というケースがよくあるが、漫画も研究と同じでプロセスは関係なく結果が全てなので、至極納得である)、それは少なくとも自分の生き方ではないし、夫婦それぞれが楽しく仕事をしている方が将来の子どものためだと考えているので、この体制で続けていきたい。(もし同じように夫婦で働き続けたいと考えている研究者夫婦がいたら、参考になるようにも考えている。自分自身、NAIST時代に男女共同参画室で、いろんな先輩教員夫婦の事例を聞いたのが、とても励みになったので)

そういえば、中学生のころから窓際になって仕事がなくなったときは、できる限り帰宅時間が遅くなってほしいと父以外の全員が思っていて、平日にわざわざ碁会所に通ってから帰宅したりしていたこともあったようだが、振り返ってみると申し訳ない。4人兄弟の育児や家事を母一人で全部やるのはものすごく大変だったと思うが(先日母に聞いたら、父もオムツ替えていたらしいが)、父が日中いないならいないで家庭内が最適化されてしまうので、そこに急に来てもなかなか入る余地がないのである(弟たちに勉強を教えたりしていたので、育児をしていたことになりのだろうけど)。まあ、そうならないようにも、娘に父親の存在を刷り込んでいるわけだが……(しかし0-1歳のときの記憶なんて、どう考えても大きくなったら覚えていないだろう)

お座敷を貸切で使ったので、小さい子が2人いたが、大きな問題はなかった。子どもがいる我々と一番下の弟夫婦はほとんど会話に参加できなかったが、これくらいの年齢の子どもがいれば、そういうものであろう……。