教えることでより多く学ぶ

例の如く朝には病院に寄る。検査の様子がよければ退院らしいので、午前中退院だったら午後出勤にして、午後退院だったら一回出勤して早退する予定だったが、午前中に退院できるそうなので、ラウンジで待機。

母と祖父の話などをしていたら、ゾロゾロと看護師の人たちが集まってきて、なにやらカンファレンス的なものを始めた。あれ、何が始まるんだろう? と思った0.5秒後には母は荷物をまとめて退出し、5秒後に部屋を出たら母がどこに行ったのかも分からない(同じフロアにいるのかすら分からない)。いつものことながら、身のこなしがやたらと早い。

妻の話では、大学病院に勤務する看護師は、ときどきこうやって集まって勉強会を開いたり、論文を書いたりしているそうである(勤務とは別なので、仕事が休みの人も来る)。ウェブ系のエンジニアは仕事とは別に集まって勉強会をしたり、論文を読んで実装したりするのはみんな勉強熱心でよい環境だなと思っていたが、看護師の世界ではずっと前からそうだったと……。個人的には就職前の1ヶ月以上のインターンシップもよい制度だと思うが、看護学部ではそもそも1年弱病棟実習しないと卒業すらできないし、情報系なんか比べられないくらい昔からそのようになっているし、所変われば品変わる、とはよく言ったものである。

結局11時前には退院手続きを済ませて帰宅。またすぐ来るだろうから、ということで病院側で入院グッズのスーツケースとボストンバッグを預かってくれたので、荷物を運ぶのは楽だった。

家に帰って都民共済の入院給付金の手続きを聞く。健康保険でカバーされないので、こういうのはありがたい(普段掛金を払っているので、こういう還付がないと払い損だし)。京都に引っ越したとき「もう都民じゃないしなぁ」と解約しようかと思ったのだが、また都民になる日が来るとは……。

昼過ぎに出勤する。昨年度、アルゴリズム演習の授業を受けてくれていた学生が、質問があるということでお話する。質問はフロントエンドの開発で、自分はほとんど経験がないのであまり教えられることはなかったが、参考になったかな? 授業は全然関係ないが、こういう思いがけない雑談のほうが、自分も知らないことや、若い人がどういうことに興味あるのかを学べておもしろい。やっぱりアルバイトでもインターンシップでも未踏でもなんでもいいので、実際誰かが使うものを作るという経験をするとよいと思う。学部生のうちにそういう経験ができるとよいのだけどな〜。(ただ、のめり込みすぎると成績を下げ、研究室選択にかなり影響を与えるようなので、あまり諸手を挙げて勧められないのが玉に瑕……)

うちの研究室に配属されなくても、言語処理に興味ある人は広くうちの新入生向けの勉強会に参加してくれてよい、というふうにアナウンスしたところ、他の研究室の人たちから出たいという話を聞き、嬉しく思う(ビッグデータ解析の研究をしている石川研とは Introduction to Information Retrieval の合同勉強会をするが、それと別にうちの研究室だけでやっている勉強会にも)。学部3年生でも出てくれていいのだが、情報通信コースは学部3年前期の授業がいちばんヘビーになっているので、それ以外なにかするのは難しいだろうなぁ。研究室のリソース的な問題で、研究室外の人にまで机や計算機を用意できないけど、そういう条件は自分でカバーする、という人はサポートしたい。

夕方から研究室に行く。新入生が増えて活気が出てきた。午前中は TA が中心となってオライリーの「入門自然言語処理」(正確には、無料で公開されている Natural Language Processing with Python  の方)を使った勉強会がスタート。

入門 自然言語処理

入門 自然言語処理

初回は導入だったようだが、NLTK(という Python で書かれた自然言語処理ツールキット)のインストールに手こずっている人がいるようで、TA がサポートしてくれていた。すばらしい。教えることで知識が定着するので、どんどんお互い教えあってほしいものである。

夜は国際会議の投稿論文のメタ査読。2月に一度やったので、今回は慣れたものである。数日前から査読者たちのコメントが来ているので議論をしてもらったり、それを眺めたりしていたので、なんとなく心は決まっているのだが、それでもボーダーラインの論文をどうするかであれやこれやと悩み、時間がかかる。1本1本の論文は短くすぐ読み返せるのは幸いだった。