教員が勧めるよりも同級生

午前中は ACL 2019 読み会である。3つ紹介してもらったが、一番納得度が高かったのは以下の論文。

  • Shamil Chollampatt, Weiqi Yang, Hwee Tou Ng. Cross-Sentence Grammatical Error Correction. ACL 2019.

これは文単位の文法誤り訂正では訂正できない誤りがあるので、複数文を入力して訂正することで時制の誤りや限定詞の誤りを訂正している、というものである。BERT を用いたリランキングも試しているし、これが ACL というのは納得。しかし時制の訂正に前の動詞の情報を入れるといい、というのは我々も Tajiri et al. (2012) で示しているので、リファーしてほしかったのだけど……(確かに文を超えた情報は入れていないのだけど、この研究はコンテクストは全て訂正前のものを見ているのに対し、Tajiri et al. (2012) では CRF を使って Viterbi でデコードしているので、こっちのやり方の方がいいと思うのだけど)。

昼からは M2 の進捗報告。研究室の M2 が全員就職活動が終了したという報告があり、めでたい。毎年1人くらい、この時期まで引っ張る学生がいるのでちょっと気になるのだが、研究室の進捗報告等にちゃんと出てきている修士の学生に関しては、就職先を斡旋したりしている(学部生については就職活動のタイミング的に研究室の指導教員ができることは特にないので、斡旋することはないが)。博士の学生に関しては、まだ特に頼まれたことはなく各自勝手に就職先を決めているが(就職先について相談された場合は喜んで相談に乗っている)、頼まれたらもちろん斡旋するつもりである。

午後は南大沢に移動して B1 の人工知能・自然言語処理概論の授業。冒頭では、先週の復習ということで、@kuge_masa くんに情報科学若手の会の紹介をしてもらう。彼は高校生のときに日野キャンパスの大学説明会に2回来てくれて、そのときに若手の会を紹介したところ、速攻で参加申し込みしてくれて、高校生のときから楽しんで参加してくれているようなので(今年は台風19号のために残念ながら若手の会自体がキャンセルされてしまった)、他の学生にも紹介してほしいと思っていて、頼んだのである。

首都大に来てから毎年情報通信システムコースの B1 の学生に参加を勧めているのだが、これまで1人も参加してくれた人がなく(もしかしたらいるのかもしれないが、自分は聞いていない)、教員がいくら勧めてもあまり効果がないなぁと思っていたのだが、今年は同級生から勧められたという効果があるせいか、興味あるという学生が2桁いたので嬉しい限り。情報通信システムコース時代も、社会人の人のトークで外部の人にトークをお願いしてもあまり学生には響かない一方、OB/OG に頼むとかなり学生の食いつきがよく、凄すぎる人にトークしてもらっても「すごいなあ、自分とは違う世界のことだ」と雲の上の人のように思って乖離してしまうようだが、(元)首都大生の話となると「これなら自分でもできそう」と思ってくれるのかなと考えている。

まあ、自分自身、Microsoft Research や Apple にいて思ったのは、アメリカと日本の大学(院)はそんなに違わないと思うのだが、先輩や同級生、後輩がカジュアルに起業したりトップカンファレンスに通したりするのを見ていると、「あいつでもできるなら自分でもできる」と思って心理的なハードルが下がってみんな気軽に挑戦する(そもそも挑戦というほどの障壁でもなく、授業のレポート少し気合を入れて書くか、くらいの気持ちでトップカンファレンスに通すし、この夏は短期のバイトするか、くらいの気持ちでスタートアップで働いたりする)ので、首都大(都立大)の学生もそうなってほしいと思う(能力はあるのに、リスクを取ろうとしないので大きく化けるチャンスを逃している、と思うことがよくある)。