シンプルな問題だからシンプルに

午前中はメール処理。そういえば今週はいいニュースが2つあり、1つはD3 の [twitter:@moguranosenshi] くんが情報処理学会自然言語処理研究会の学生奨励賞を受賞したことで、もう一つは D2 の鈴木さんの論文が ACL Student Research Workshop(自然言語処理のトップカンファレンスの学生セッション)に採択されたことである。

前者は発表練習のときから「学生奨励賞をもらう最後の機会なので、獲りに行きたい」と(すでにプレゼンテーションスキルは高かったのに)プレゼンテーションスタイルから変えてきて、並々ならぬ意欲を感じており、無事有終の美を飾ることができてよかった。話としては「これまでヒューリスティックによかった手法を理論的に再解釈し、かつそこから(再解釈の結果、自然に導かれる方法で)改善した」という内容で、面白味が分かってもらえる人には面白いだろう(伝わらない人には、手法がシンプルすぎると思われるだろうが、理屈のわかる手法としては、シンプルな方がいいのではなかろうか?初めて tf.idf を提案したら、シンプルすぎると思われるかもしれないが)。あとはこれが国際会議に通ってくれることに期待。

後者は自分も色々考えるところが多かった研究であるが、去年の11月くらいから始めた研究が、こうやって形になったのは素直に嬉しいものである。複数の機械翻訳システム(ここでは Google 翻訳のニューラル機械翻訳と以前の機械翻訳)を使って言い換えを獲得するという話で、ありそうでなかった研究である(研究者が聞くと「そんなの誰でも思いつくのではないか?」と思うだろうけど、上記の研究と同じで、シンプルなことはシンプルに解くのがいいと思っている)。実験やアノテーション、分析は2人が進めるので、自分の主な役割は原稿を読んでコメントすると言うことだが、原稿のバージョンが上がるとけっこう内容が変わっている(大きく改善されている)ことが多く、読むのが楽しみでもあった。

昼から機械翻訳勉強会の進捗報告。昨年から今年にかけてのうちの研究室の戦績を見ると、ニューラル機械翻訳そのものの勉強は面白いのだが、王道の研究をするのはうちの研究室では厳しい(世界中に手の速い人がいて、太刀打ちできない)ので、ニューラル機械翻訳の特性が分かった上で他のタスクにうまい形で適応するといったような切り口の方が(少しだけ時間が稼げて?)いいのではないかな(Microsoft Research の自然言語処理グループが、統計的機械翻訳の手法を色んなタスクに応用して論文を量産していたのを思い出す)。ニューラル機械翻訳に関しては「この研究テーマは(誰かに先を越される可能性が高いので)危ない」という嗅覚が働くのだが、それで学生に研究テーマの再検討を要請したりするのは心苦しい。教員から「責任は自分が取るから、これをやって」と言うのとどっちがいいんだろうか……。

夜は保育園の全体会(保育者と親の会)。新しく障害者の人(卒園児)が保育者に加わるというアナウンスがあり、そもそもこの保育園自体が障害者も含めて保育するいう目的で設立されたものなので、こういう方向で保育者が受け入れ体制を整えるというのは心強いものである。

ちなみになぜ障害児の受け入れが最近はなかったかというと、40年前は認可保育園が障害児を受け入れてくれなかったので、それならば、ということで無認可保育園を作ったそうだが、最近は障害児は優先的に認可園に入れるので、無認可(認証)保育園に来ることがなくなった(受け入れたくないわけではなく、むしろ受け入れたいくらいだが、親は子どもが認可に入って手厚く見てもらえるのに、わざわざ無認可に入れたりしない)、という経緯だそうである。

公立と私立の学校それぞれによさがあるように、保育園もこうやって特色を出していけるといいなと思っている。(通わせることのできる距離があるので、特色云々は大きなファクターではないだろうけど)