大学を超えた研究仲間を作ることの重要性

この1週間東京に滞在していろいろな企業訪問をさせてもらい、いろいろと考えるところがあった。本来の目的は修士1年生の学生さんたちに、実社会で(自然言語処理分野の)大学院生に求められているのはなんなのか、ということを体感してほしい、というものだったが、引率した自分のほうがいろいろと教わった気もする。

その中から一つ紹介すると、PFI自然言語処理の研究開発活動をリードしている @hillbig くんとバイドゥ上海オフィスで奮闘されている @mhagiwara さん(Natural Language Processing with Python という本の翻訳も手がけてらっしゃるそうで)、ほぼ同世代なのだが、それぞれエンジニアリングに近いところから研究に近いところまでカバーされていて、そのバイタリティに圧倒される。特に PFI の話を聞いていて思ったのは、自分がある分野のスペシャリストになって、同じ会社の仲間が別の分野のスペシャリストになって、お互いがお互いを支え合う(教え合う)環境になっている、というのが一番印象に残った。

というのも、大学院までするする〜っと来てしまった人は、テキストやマニュアルを見て勉強することや他人が生み出したものを利用したりすることが得意だったとしても、必ずしもなにかを生み出すことに長けているわけでなく、お互い教え合える輪の中にいるということは、なんらかの分野ではとんがっていなければならない(その分野では自分が一番だという自負がなければならない)わけで、そこには一つのギャップがあるように思う。また、自分のチームの中での立ち位置を明確にして、自分がカバーできないところは他人を信頼して任せる、ということも必要なのだが、他人を信頼するのが下手な人というのも世の中にはいるわけで、それもどうすれば乗り越えられるのか分からない(グループでなにかをした経験を積むしかない?)。前者の課題も後者の課題も自分に関して当てはまることでもあるのだが……。

言い換えると、「俺はこっちの敵を絶対に食い止めるから、お前はそっちの敵を頼む」と思い切ることによって、後ろの守りは手薄にしても前に集中して全体で最大のパフォーマンスを出せるように動けるようになる、ということで、どこかに穴があるとそれで全体が崩壊しかねないのだが、小さなグループだとうまく動く、ということであろう。

自分がその輪の中にいるのかどうかは分からないが、@hillbig くんも @mhagiwara さんもそれぞれの環境で活躍されているので、自分も研究の立場からささやかながら援護射撃をしたいと思うのであった。

あとたまたまかもしれないが、@hillbig くんは Google に、@mhagiwara さんは GoogleMicrosoft Research に、自分は Microsoft Research と Appleインターンシップに行っているが、海外インターンシップ経験者というのも日本の(特に博士後期課程の)大学院生に根付かせたい一派であると思っているので、今後時間はかかるかもしれないが、草の根的にもっと海外に行く日本の大学(院)生を増やしていきたい。(まずは日本でも長期のインターンシップを増やしていかないと、学生のほうが数ヶ月のインターンシップと聞いて拒否反応を起こしてしまうのがもったいない)