やり方を学んで次に再利用

母子ともに退院してから1週間(生まれてから2週間)経過だが、2週間休暇をもらっているのであと1週間。扶養の申請と年末調整のために一度日野キャンパスに行かないといけないので、市役所に扶養申請のための戸籍謄本を取得しに行く(妻はパスポートが失効していて戸籍謄本が必要だし、余分に発行してもらった)。

帰宅してから1時間ほど学部教務のお仕事。休暇明けが学科会議、その翌週が学部教務委員会なので、依頼して審議しておかなければいけないことがたくさんあるのである。休暇中の仕事といえば、学部教務のお仕事か、学生の原稿を添削するか(こちらも締め切りがある)、雑多なメールの読み書きで、だいたいそれぞれ1:1:1くらいの割合。ならすと1日1時間強だろうか。2時間確保できるといいのだが、なかなか難しい。

NHK で新海誠監督の番組が2つやっていたので、録画して見たりする。新海作品の映画は最新作以外全部見て、特に好きでも嫌いでもないと思っていた(映像は間違いなくきれいだが、自分勝手に感情をぶつけて周りを傷つける登場人物が出てくるところが好きじゃない)が、話すのを初めて見たところ、新海監督はとても好きな人だった。世界、特に若者に対する眼差しがとても温かいのである。一緒に働く人への尊敬だとか、チームの盛り上げ方なんかも、とても共感できる。新海作品はそうでもないが、一気に新海監督のファンになった。

番組の中で、文学部出身でゲーム会社で働いたあとに監督になったという話が出てきて、ああ、だからかぁ、と思ったりする。自分も紆余曲折を経て今の仕事をしているし、大学教員の仕事を始めたとき30歳を超えていた(現在の職場でフルセットの大学教員の仕事を始めたのは35歳だった)ので、迷いながら生きてきた身としては、若い人が悩んでいるのを見ると暖かく応援したくなるのである。いまやっていることは自分は適性がないかも、だとか、なんでこんなところに来ちゃったんだっけ、と悩み始めたあたりからが、人生おもしろいと思っている。

自分の得意ないこととのズレ、あるいは自分がやりたいこととのズレを意識するタイミングがあり、これを意識することが現状を変えるきっかけになるのだが、ともするとそれまでやってきた(自分には得意な)ことから離れられなかったり、逆にそれまで積み上げてきたものを全部(自分のやりたいことではなかったと)捨てて新しいことをしたくなったりする。しかし、どちらも恐らく間違いで、苦手なことでも時間をかけてやればできるようになるし、成長しようと思うと挑戦することは必要なことだし、新しいことをやりたいにしてもそれまでの蓄積を捨てると実は伸びしろが減ってしまい、そこまでやってきたことの延長線上で少しずつ幅を広げていく方がオリジナリティが出せたりするのである。

ただ、いずれも匙加減が難しく、新しいことに挑戦するときは自分の「勝ちパターン」は一旦忘れて「郷に行っては郷に従え」で行った先のやり方をまず吸収する必要があるし、逆に得意なパターンを完全に捨てると自信喪失するかあるいは上達が遅くて挫折・ドロップアウトする、という場合もあるので、バランスが重要。新しい分野に行くときはたぶん「これまで何を学んだか」という専門知識に関する部分は(新しい分野でひとかどのことができるようになると、あとで活きてくるけど)一度忘れて、「これまでどのように学んだか」というメタ知識に関する部分は最大限に活用して短期間でレベルを上げるというのがよいと思う。丸暗記が得意なタイプ、手を動かして理解するのが得意なタイプ、あるいは原理原則から一つずつ追って納得していかないと全く頭に入らないタイプ、色んなタイプがいるので、自分がどのやり方が合っているのかというのを理解した上で、その戦略で取り組む、という寸法である。

どうも学生を見ていると、過去に自分が学習してきた方法に関してあまり意識せず、毎回行き当たりばったりに勉強しているような人がいるのだが、常に勉強し続けないといけない分野だと、その場に留まり続けるために必要な量のインプットが得られず、沈んでしまう。そこまで積み重ねてきたものがあるのだから、それを活用しないのはもったいないし、ぜひやり方については思い出してやってほしい。