ACL-IJCNLP 2015 初日: 研究を続けていればまた会える

朝の5時に家を出発。今日は ACL-IJCNLP 2015 という自然言語処理のトップカンファレンスに出席するため、北京に飛び立つのである。

今回は時間が大事、ということで、最も長く滞在できる便を探したところ、羽田から出ている JAL 便だと一番長くいられるようだったので、羽田発着である(他の条件が同じなら、国際線でも成田発着ではなく羽田発着にしているが)。いろいろ調整した結果、今回は2泊3日の弾丸ツアー(本会議1日目の午後から参加、3日目の午前のセッションまでで帰国)なのだが、それでも参加できるだけありがたい。近場でよかった。

フライトは4時間(時差が-1時間あるので見かけ上3時間)で、あっという間に到着。韓国開催の ACL 2012 のときも近かった印象だが、これくらい近いと助かる。

空港からホテルまでタクシーで直行。ホテルに着くと、Appleインターンシップをしていたときの同期、Yonatan とすれ違って少し立ち話。彼は自分が D3 でインターンシップをしているとき PhD コースの2年目(日本で言う修士2年に相当)だったが、そろそろ PhD コースも終わりが見えてきたようだ。こうやって国際会議に来て旧交を暖めることができる、というのは嬉しいことである。

ホテルで少しネットワークの設定を済ませ、会場に向かう(今回、会場に隣接するホテルにした)。VPN はうまく使えなかったが、ssh で socks proxy を立てる方法はすぐできた(Firefox のプロキシ設定がシステムの設定と別ということに気づかず、多少時間を取られたが)。iPhone でネットワークにつながらないという問題はあるが、特に Google Maps を使いたいとかいうこともないので、無問題。

会場に行くとき、ACL 参加者っぽい人に話しかけてみて雑談をしていたところ、会場からホテルに向かう松本先生と遭遇。5分ほど立ち話をしたが、松本先生とお会いすると最近ほとんど「研究室どう? 大変じゃない?」「研究費取れてる?」と心配してくださるという展開になる。いま大学関係で特に困っていることはないのだが、確かに公的な研究費は最近取れていないので、今年(来年度)はちゃんと獲得していきたい。

最近タスクとして言語生成に興味があるので、午後のフルペーパーのセッションは言語生成に出てみたが、3つの発表はどれもいまいち。ショートペーパーのセッションも要約と生成に出てみたのだが、こちらもパッとしない。ショートペーパーは意味論か感情分析のセッションに出ればよかったかなー。ちゃんと意味を理解した(計算可能である)生成をしたい、というのが背景にあるので、自分はやはり軸足が意味側にあるのだと思った。

夕方はポスター。こちらも発表はたくさんあるのに、興味を惹かれる論文はそれほど多くなかった。一番おもしろかったのは

  • Chris Quirk, Raymond Mooney, Michel Galley. Language to Code: Learning Semantic Parsers for If-This-Then-That Recipes. ACL-IJCNLP 2015.

である。これは、自然言語で「もしこうならこうせよ」と書いたものを意味解析する、という研究である。論文から例を取ると

  1. turn on my lights when I arrive home
  2. text me if the door opens(text というのは動詞で、SMS みたいなショートメッセージを送る、という意味。日本だと「LINE して」みたいな感じ?)
  3. add receipt emails to a spreadsheet
  4. remind me to drink water if I've been at a bar for more than two hours

のようなものを解釈する、ということである。本当は PC もスマートフォンもこういう方向に行きたいのだと思うし、実用的な意味解析に向けて世の中が動きつつある、というのは個人的にワクワクするお話であった。特に、Microsoft Research の人たちがこういうことをやっている、というのが象徴的である。かなり長い間、MSR の人たちは機械翻訳に注力していたが、その後機械翻訳自身の研究というよりは機械翻訳の仕組みを使って別のタスクに応用する、という研究にシフトしつつあり、その横でウェブ検索の研究が盛んになってきていたが、いまや対話と意味解析の時代になってきている。頑健な解析技術も必要であるが、いままさに意味の研究がおもしろいのではないかな?

ポスター後ホテルに戻ってポスターの添削をしたり、原稿の添削をしたり。8/31〆切の国際会議の原稿を書いている学生がいるので添削を続けているが、しばしばこの会議は〆切が延長されるので、今回も延長されることを大いに期待しているのだが、延長されなかったらこれは厳しい……(〆切4日前なのに、まだ2/3しか英語になっていないし、そもそも1往復目が終わっていない)。実験結果は悪くないのだが、論文のクオリティを上げきるには、あと1-2週間ないと間に合わなさそう。せめて1週間、できれば2週間延びてくれないかなー(汗)