仙台で自然言語処理をする

朝、寝ている娘にお別れして東京駅へ。ついいつもの癖で自転車に乗ってきてしまったが、帰りはおみやげを持っているからバスで来たほうがよかったかも……。

駅まで来て、iPhone が充電されていないことに気がつく。新幹線の中でインターネットにつないで仕事をするつもりだったのだが、これは無理そう。東京駅に行く電車の中も、電源を切って極力セーブ。代わりに以下の「沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉」を読む。

アメリカの医療崩壊についての続報で、新たな知見は得られたが、どうも最近彼女の文章がちょっと苦手な文体になってきて、読みにくくなってきた。もっと淡々と書いてくれるといいのだが、アジテートするような書きぶりになってきたのである(アジテートするなら書き方で煽るのではなく、書き方はあくまで冷静にして、ないようで煽ってほしい)。

新幹線の中では事前にダウンロードしておいた論文のコメント。論文を共著で書くとき、筆頭著者が学生だと心置きなく添削できるのだが、学生でないとやはり著者を尊重してあまり細かいコメントができない。そこで、これまでコメントについては多少セーブしていたのだが、今回はあまりセーブしないことにして、言いたいことは言わせてもらい、書きたいことは書かせてもらうことにした(それで決着するほうが、全員嬉しいと思ったので)。

それがいいのか悪いのかは分からないが、論文のクオリティを上げるには、相手が誰でも言うべきことは言ったほうがいいのだろう。とはいえ、論文のクオリティを上げるだけが全てでもないし、個人個人で事情もあるので、自分は割と保守的になってしまうのであった。

午前中は情報処理学会自然言語処理研究会(NL研)。今回も Ustream で配信である。配信自体には慣れたが、これ1人で全部やるのはしんどいので、アルバイトも入れて2人ほしいし、複数人で回せるようにもう何人か担当してもらえると嬉しいかなぁ。とはいえ、学会はニコニコ動画にする方針を発表しているので、Ustream でのやり方を学んでも意味ないし、ニコニコ動画に関して動きがない限り、自分が主担当なのだろうけど……。

お昼は東北大学乾・岡崎研究室の方々と、うなぎを食べにいく(結局ランチに3,500円出す決心がつかず、1,500円の和定食にしたが)。研究員生活についてお聞きしたり、学生生活についてお聞きしたり。東北大学(乾・岡崎研)はよい環境だなぁ。もっと修士から東北大に行く学生がいてもいいような気がした。(うちの研究室の見学者も、研究テーマ次第では積極的に東北大をお勧めしているのだが、今年はそういう見学者がいなかった)

午後は学生セッションである。個人的に一番おもしろかったのは、NAIST 澤井くんの「Abstract Meaning Representationを用いた名詞句の意味解析」の研究。英語の名詞句の関係解析タスクなのだが、バラバラに解くのではなく関係解析と述語項構造解析を同時に解くとよい、というお話。結果も良好だし、納得。気になるのはデータセットの偏りで、実運用を考えるとこれはまともに使えるデータじゃないのでは、というところ。

しかし乾先生が質問されたり、その後休憩時間に話されていたのを聞くと、乾先生は本気で真剣に意味について考えてらっしゃるのだな、と改めて思う。自分などは、実際に使えそうにない時点で(理論的にすごい研究でなければ)その研究に対して深く追求しないのだが、乾先生は AMR がこれまでの名詞句の意味解析のアノテーションとどう違うのか、本質的にこのようなレベルの抽象化で扱うことができるのか、それが知りたいのだ、ということを熱っぽく語っていて、自分も修士時代に勉強会や共同研究のミーティングでよくこういう話をお聞きしたのを思い出した。良くも悪くも自分は言語現象自身を深く見るよりは、計算機を用いて「意味」を計算する仕組み自体に興味があるのだな、あと、実用的でかつ研究にもなるような話が好きなのだな、と気がついた。自分はもっと言語理論寄りだと思っていたのだが、かなりプラクティカルになってしまった感がある。

夜は懇親会に参加。いろいろな人とお話したが、せっかくの合同懇親会なので知らない人に話しかけよう、と思って話しかけた [twitter:@RTINOUE] さんと意気投合。やっぱりおもしろいのは生成ですよね〜、と話したりする。SLPと合同なので、こうやって少し新しいつながりが生まれるのは嬉しいものである。