流行も自分で作れば最先端

午前中は実験運営委員会。年度内最後の委員会である。2年目のコース幹事は実験運営委員会(学部2-4年生の実験関係の運営)の取りまとめをしないといけないのだが、昨年1年目のコース幹事として Cc してもらっていたメールを読み返しつつなんとか1年乗り切れて、ほっとしている。

思えば自分は助教として学部生のいるところで働いたことがないので、このような学部生を対象とした実験を担当した経験がない。電気系の出自を持つ情報系の学科・コースだと実験もそれに対応したものがあり、そういう実験が担当できるかどうかが助教として働くときに有利に働く、という話を聞いたことがあるが、確かにその通りだと思う。自分は学部生時代完全なる人文系にいたので、オシロスコープを触ったこともないし……。(生命科学には興味があったので、普通人文系の人は取らない輪読と実験に出させてもらって、自分の DNA を電気泳動して見る実験はやったことがある)

最近は身辺で大学の教員・研究員から企業や研究所の研究員に転じる人が増えていて、大学教員を続けている自分としては複雑な心境であったが、ここ数ヶ月、こういう形で大学と企業、研究所(公的なものも、企業も含め)の間で人材の流動性が上がるのは、日本の未来にとって明るいのではないか、と思うようになった。結局大学は教員ポストに誰を入れるかは内部でコントロールできるが、教員ポストがどれくらい確保できるかは内部だけではコントロールできないので、内部の人が辞めることで空いたポストに外部の人が入ってきてくれるのが、現状の枠組みの中で実現可能な人材交流である。(出向みたいな形でもっと交流できればいいのかもしれないが)

午後は進捗報告。言語処理学会年次大会に参加していない5人のうち、インターンシップに行っていて来られない1名を除く4名が進捗報告をすることになっていたのだが、時間になっても1人しか来ない……。結局1時間待っても他に人は来なかった。1時間を過ぎてから、今日は欠席します、という連絡がポツポツ来たが、事後報告なので、さすがにこれは注意した方がいいのでは?と思ったりする。大学の場合、休む人が1人2人いるのは人数が増えると仕方ないと思うのだが、4人中3人が無断欠席というのはさすがに……。

他の人を待っても仕方ないので来てくれた1名の進捗を聞く。結局データが集まらないとどうしようもないのだが、データが集まったらそれだけで論文になるかというとそういうことでもないので、そろそろしっかりサーベイをするように伝える。本当は最初にちゃんとサーベイをしてから着手するべきなのだが(先日の言語処理学会チュートリアルでも @neubig さんが強調していた)、一度自分で考えてやらないと分からないこともあるので、あえて強く言っていないのである(逆に言うと、ソフトには言っているので、優先順位的に下だと判断した、ということだろう)。

研究は新規性がないといけないので、同じことをやっている人がいるとそれだけで発表できないのだが(実際それで博士号取得を延期せざるを得なかった、という話を身近で聞いたことがある)、サーベイをほとんどせずに「知らなかった」では済まされない。どれくらいサーベイすればいいかはケースバイケース、人それぞれなのだが、明らかにサーベイ不足の場合は自分は修士論文の副査でも差し返してサーベイしてもらっている(実際、訂正された修士論文サーベイが拡充されているかどうかもチェックしている)し、遅かれ早かれ修士論文までにはサーベイして入れないといけないのだから、早目にサーベイに取りかかっておいたほうがいいのではないか、と思う。(一通りその分野の先行研究を読み込めば、毎年開催される国際会議で出てくる関連研究については、差分だけチェックすればよいし、理解もしやすいので、楽)

夕方は、Google Code が終了するらしいので、誤り検出・訂正ワークショップの各システムのソースコードやモデルファイルを GitHub に移行する。Google Code を使ってデータを提出してもらうとき、データの容量制限が厳しいかと思っていたのだが、蓋を開けるとそんなにソースコードは大きくなかったので、GitHub でも全然問題なかったのである。ソースコードも git でコミットしてもらっていたので、移行は(自動ではなかったが)それほど手間ではなかった。

パッケージ開発者として活動していた経験からは、こういうソースコード配布サイトがコロコロ変わるのはやっかいで、できればずっと変わらないでいてほしいのだが、動きの速いこの世界ではそうも言っていられないのだろう。今回はたまたま GitHub に移行したが、それがベストな選択肢であるとは考えていないし、個人的には10年後には GitHub も git も廃れているだろうと思っている。

ちなみに、すぐ廃れる技術はやる意味がない、と考えているわけではない。盛り上がっている技術の周辺は人が集まっているので、そこに飛び込んだほうがおもしろいことも多いだろうし、最初はそういう流行り物から入るのもありだと思う。ずっと踊らされると気の毒だが、流行を自分が作るくらいの気持ちになれるといいのではないかな。