予備校「私大文系」クラスの終焉

代ゼミが主要校舎を除き、大部分の校舎を畳むらしい。自分は現役時代から代ゼミに通い、大学に入ってからも代ゼミの授業に出て、代ゼミの寮で住み込みチューターをしていたくらい代ゼミが好きだった(いい予備校だとは思わないが)ので、感慨深いものがある。

代ゼミのニュースを聞いて「進学塾という選択」を本屋で購入して読んでみた。実のところ、本屋でこの本を何度か見かけたのだが、中学受験は必要悪だと思っているので、教育関係のホンは割と読む自分も、この本はなんとなく避けていたのだが、もはや大学受験と中高一貫校、進学塾は切り離せないようなので、観念したのである。

進学塾という選択 日経プレミアシリーズ

進学塾という選択 日経プレミアシリーズ

自分が25年前に(半年くらいだけだが)中学受験を経験したことがあるので、そのときとの差分も含めてよくまとまっていた。むしろ、地方から東京に出てきて自分が中学受験を経験していないのに、中学受験させないと、と思っている人なんかは、中学ガイドを必死になって読むより、中学受験産業を取り巻くこういう本を読んだほうが客観的に見られるようになるのではなかろうか。

自分などは、せっかく中学入試が終わったのに、入学したら中1から大学受験に向けて塾に通う同級生が少なからずいたのに衝撃を受けたのだが、確かに6年間中高一貫校で過ごしてみて、大学入試だけを考えると、学校の授業はほとんど意味がなく、学校の合格実績はほとんど塾や予備校の教育によるものだと思う。学校は、部活だとか友人を作るだとかいうために行くものであって、いわゆる偏差値の高い学校に入ったからといって、質の高い教育はしていないんじゃないかな。

結局代ゼミはいわゆる私大文系浪人生をターゲットに、そこから収益を得て原資とし、国公立理系や医学部受験生を特待生にして合格実績を多く見せ(水増しというほどではない)回す、というやり方だったので、浪人生はどんどん減っているし(ピーク時のなんと1/10)、そもそも浪人して受験勉強をしてまで入りたいような私大文系は片手かせいぜい両手で数えるくらいしかない(みんなそこそこの大学に現役で行ければよいと考えている)ので、完全に時代から取り残されていた(大手予備校でも、駿台河合塾は私大文系偏重ではないので、まだ数年は大丈夫だろう。10年後には、全部潰れていてもおかしくないけど)。

中高一貫校学生をターゲットに、勉強のできる子を集めて現役での大学合格実績を稼ぐ、というのが遅くとも20年前からスタートしていたように思うし、代ゼミも自分が大学に入った前後に現役生向けコースを始めていたが、本当はその予備校のトップの中のトップ講師が教えなければ意味がない(御三家に行くような生徒は、ときどき講師より勉強ができたりする)のに、新人講師の練習場のようになっていたので、これはダメだろうなと当時から思っていた。まあ、すでにSEGや平岡塾、鉄緑会のような塾が口コミベースで広がっていたので、それらと戦っても中高一貫校生相手では勝ち目がなかっただろうから、仕方ないとも思う(自分の通っていた学校でも、無料の講習はともかく、お金を払って代ゼミに行くのは同級生から馬鹿扱いされていた)。

とはいうものの、中高一貫校の高い学費を払い、さらに家庭教師をつけたり塾に中学生から通わせたりできるのは一部の富裕層だろうし、人気が出ると思われるのは、中堅の共学中高一貫校で部活も盛んで、塾に通わせなくても学校の勉強だけでも特進クラスは早慶に、一般クラスは(G)MARCHに入れますよ、というような(可能であれば大学付属の)学校であろう。まあ、そういうのができるとすると、よほど優秀な教員を揃えているのでなければ、塾や予備校から講師の派遣を受けるか、あるいは卒業生に愛校心があって格安で講師を引き受けてくれるとかでないと、無理だろうなぁ。