勉強会に付き合ってくれる友人は大事な仲間

休日には仕事をしないことにしているのだが、国際会議関係の仕事は時差があるので例外的に休日でも仕事することにしている。ともあれ、これで今回のお勤めは終わりかな。今回は初めてのことだらけだったが、いろいろと勉強になった。メタ査読委員でこの大変さだとすると、プログラム委員長はどんだけきついんだろうか……(松本先生がときどき苦労話をしてくださるが、プログラムの編成で三日間徹夜だったとか、本当に大変そう)。

先日高田馬場で購入した「ヒラノ教授の線形計画法物語」を読む。

ヒラノ教授の線形計画法物語

ヒラノ教授の線形計画法物語

最近のヒラノ教授シリーズは食傷気味だったが、今回の本はとてもおもしろい(たまたま自分が隣接分野の研究者だからかもしれないが)。最適化理論の発展が当事者の一人として書かれていて、表現も至って平易で楽しめる。ただ、どれくらい分かりやすいといえ、単体法とか、ラグランジュの未定乗数法とか、切除平面法とか、理工系の学部1年生くらいの知識がないとピンと来ない気もする。むしろこの内容でゴーサインを出した編集部の英断に賛辞を送りたい。

本書の中で大きく同意したのは輪読についての話。大学院時代に難しい本を読みたいと思って友人たちと勉強会を開くのだが、本文を読んでひたすら演習問題を解くのがもっとも効率的に勉強できる、ということが書かれている。自分も全く同意見であり、学びたい内容が難しければ難しいほど、講義形式ではなく輪読形式で勉強会を開くというのが、一見時間がかかるように見えるのだが、最終的には効率的なのである。

自分自身、大学院に入るまでは講義形式か、あるいはせいぜい自分で勝手に本を読んだ方が効率的(他人と読んでも一人で読んだ方が速いので時間の無駄)と考えていたのだが、それが通用するのは一人でなんとかなる程度の内容なのである。ざっくり言うと、N人で輪読すると全体の速度は各人の速度の平均になるのでパパッと進める人にはかったるく感じるのであるが、一度難しいところに出会うと、輪読だとN人のうち1人でも分かる人がいれば他の人も分かって先に進めるのに対し、1人で読むと、そこで挫折するかスキップして先に進むか、はたまた誤解していたり理解していないことに気がつかず先に進んでしまったりすることまであるのだ。

NAIST松本研でいくつも勉強会に出てみて、最初は利点がよく分かっていなかったが、長期的には勉強会でみんな一緒にやるというのは、研究力の足腰を鍛えるのにとても役立ったな、とあとで振り返ってみて思うのであった。高校生や大学生のころの自分には、勉強会に付き合ってくれる友人がいたら、それはとても幸せなことであり、そういう友人がいてくれることこそが、研究室や大学院に行く意味だよ、と教えてあげたい。

あと本筋ではないが、ヒラノ教授シリーズで cplex や gurobi の話が読めるとは思わなかった。いろいろと書かれている薀蓄がおもしろい。数値化最適化の高速化や大規模化に並々ならぬ努力が払われてきたのだな、と痛感する。最適化問題における高速化について知ったふうな話を書いてしまって、大変恥じ入る次第である……。