楽しく続けられる学会の仕事もある

出勤して朝はいつも通りメール処理。

午前中に原稿執筆。ゴールデンウィーク進行なので、ちょっと焦る。ようやく着地点が見えてきた感じだろうか。毎回原稿を書き始める前に、全体でどういうことを言いたかったのだっけ? と企画書を引っ張りだしてきて読んでいるが、ちゃんと企画書に言いたいことが書かれているので、軸を外さないで書くことができる。最近健忘症なのかなんなのか、ともすると元々やりたかったことを忘れがち(紙の手帳を書かなくなったせいか?)なので、こうやって「気持ち」を(短くても)文章に残しておくことはとても大事なことであると思った。(そうして議事録文化につながるのかもしれないが……)

午後は注文していたディスプレイを受け取る。これでディスプレイは全部揃う。問題は MaciPad なんだが、生協ではなく Apple に(法人窓口経由で)直接頼むと激しく面倒で、なんで直接注文しているのにこんなことになるの? 注文している側にこんな作業をさせるの? とときどき首を傾げる(昨年度は会計担当の職員の方の手を大変煩わせてしまった)。Apple には常日頃恩義を感じているのでわざわざ直接注文しているのだが、こんなに手間がかかるなら、もう全部生協を通そうかな……。

夕方は NII(国立情報学研究所)で言語処理学会の論文誌「自然言語処理」の編集委員会に出席。大学からは1時間半で着くのだが、乗り換えを間違えて2時間かかってしまった。人工知能学会の編集委員も同時にやっているのだが、学会による違いがいろいろあっておもしろい。ただ、人工知能学会の編集委員はかなり大変だけどもっと続けてもいいなと思う(「シニア編集委員」として残る人も多い)のに対し、言語処理学会編集委員は負担は極小(数少ない仕事もお互い譲り合いの精神を最大限発揮する)だけど任期が切れたら再度やりたいとはあまりみなさん思わないというのは、対照的である。自分も「学会の仕事が楽しい」なんて書くと「ちゃんと研究しているのか、現実逃避してないで研究しろ」と思われそうだと考えてしまうのだが、楽しいものは楽しいので、どうにも仕方ない。

ただ、これは言語処理学会だけではなく、一般に学会誌・論文誌の編集委員はあえて何年もやりたいと思わないものであって(たぶん)、人工知能学会だけが編集委員をしていて楽しい特殊な学会なのだろうな、という気がする。学生のころからそうだけど、届くのが楽しみな学会誌は人工知能学会誌が断トツだし、論文誌も公開されたら数ヶ月待ったり謎のログインをしたりしなくてすぐ PDF で読めるので、アクセスしやすいので割とちょくちょく眺める(その代わり、論文誌の投稿料はかなり高め)。やりがいを感じやすいのはどうしてだろう、と考えると、人工知能学会は学会誌の編集委員と論文誌の編集委員が同じである、というのがポイントなのかな? 論文誌(専門家向け)の編集委員(=論文の査読を査読者に依頼する人)が学会誌(一般向け)の編集委員(=特集や解説記事を一線の研究者に依頼する人)を兼ねるという意識だと、学会誌の編集は「雑用」であまり気が乗らないかもしれないが、学会誌の編集委員が論文誌の編集委員を兼ねるという意識だと、むしろ学会誌の編集こそが力を入れるべきことなので、うまく回りやすいのではなかろうか。

研究者共通の問題意識だと思うが、専門家向けの論文誌を発行(オーソライズ)する、という学会の役割はどんどん弱くなっていくだろうし、論文誌の面倒を見るのが主な役割、という編集委員の役割は見直したほうがいいのかなと思った。たとえば、言語処理学会で言えば、毎年3月に開催される年次大会はいつも成功しているので、学会としてはそちらをメインにして論文誌の編集がサブになるような運営も考えられるだろう(そんなことは理事の方々でも検討されているのだろうと思うが……)。国際的にも TACL といって査読の早い論文誌が去年創刊され、採録されたら好きな国際会議で発表することができる(発表しなくてもよい)、という制度が始まったし、もっと論文誌と年次大会の距離を近づけてもよいのではなかろうか。

一方、言語処理学会の論文誌の「自然言語処理」自身は数年前に査読制度を変えてから査読も早くなり、出版から3カ月すれば PDF が誰でも無料で取得できるようになり、それなりにうまく回っている論文誌でもあるように思われる(情報処理学会の論文誌なんかは、査読も厳しいしアクセスもしにくい)ので、わざわざ変えるのは、と思う人もいそうである。特に年次大会はゆるく集まれるのが利点の一つでもあるし、論文誌を救おうとして年次大会の足を引っ張る結果になるのもよろしくないだろうし。ただし、年次大会はさすがに拡大しすぎなので、なんらかの形でセーブした方がよいと個人的には考えている。発表申し込みと予稿の投稿を同時にしたら一時的に申し込み件数は減ったようだが、また回復したみたいだし……。

若手の会についても思うところあったが、できるところから少しずつ変えていこう。(ちなみに、最近は高専生や学部生からの問い合わせが増えてきた)

編集委員会のあと、岡山大の竹内さんと研究の雑談。教員1人で研究室を運営している(講義数や学生数も大体同じ)という意味では同じだが、毎年コンスタンスにきっちり研究されているのと、それを支える勉強がすごい。自分は学会の仕事をしている場合ではないのではないか、と思ったりした(ちなみに、今年度から国内の学会関係はしばらく新規のお仕事はお引き受けしないことに決めている。少なくとも来年の9月に言語処理学会編集委員の任期が切れるまでは……)。