基礎は何年も時間をかけて身につける

朝、バスの中で I 川先生と一緒になる。ウェブマイニングの研究をしている研究室なので、ウェブテキストの解析をしている学生も多いうちの研究室と重なるところがあり、来年度に合同でなにかの勉強会ができませんか、と持ちかけたところ、情報検索かウェブマイニング、あるいはプログラミングの基礎勉強会を合同でやりましょう、ということになった。研究的にも来年度は I 川研究室と一部一緒にやる予定なので、共通にできるところは共通にしたいものである。T 間研究室は RubyJava(Weka)らしいが、I 川研究室は Python と R と Scala らしいので、ちょうどうちと相性がよい(笑)

午後は言語教育勉強会。[twitter:@shirayu] くんの進捗報告。博士論文の進捗報告だったが、日本語で書くつもりだと判明すると、松本先生が@shirayu くんに英語で書きなさいと激しく指導(笑)松本研は博士論文は基本的に英語で書くことになっているので、manab-ki くんのときも相当しつこく「英語にせえへんの」みたいな感じで会うたびにおっしゃっていた気がする……。

そういえば、@shirayu くんの書いた飛び級後に,苦しんで得たものという文章は名文である(なんだかハイライトされている箇所は微妙に外している気がするのだが……)。

入学したときは,他の人より1歩先に進んでいるのでは,というように考えていました. が,よくよく考えると, 他の人は卒論での研究経験があったり, 社会人経験があったり, 他分野での修士号を持っていたりで, そういう人と同じスタートラインに並んで出発したということは, 逆にハンデを背負っているのだということに気づいて,愕然としたりもしました.
(中略)
学振特別研究員(DC2)には,2回出して,1回目も,2回目も不採用になりました. 結構な時間を費やして準備したので,不採用になったのはショックでした. さらに,辛かったのは,同じ応募に出した人の採用されたという話を聞くことでした. 自分がうまくいかない時は,なかなか他の人の成功を素直には喜べないものです.

NAISTにいたときは(実は首都大に来てからも)ときどき「飛び級したいのですが」という相談を受けるのだが、自分はそういう人には基本的に「飛び級するくらいならオープンソースソフトウェア開発したりとか、未踏に挑戦したりとか、アルバイトで開発経験をつけたりしたほうがいいし、博士に進学する予定なら、進学してから短期修了するほうが飛び級するよりよい」とアドバイスしているのだが、なかなか納得してもらえず、連絡が途絶えることが多い。

研究の世界では年齢は割とどうでもいいファクターなので、そんなことに血道を上げるくらいなら、大学院に入学して論文をバンバン書いたらいいと思うのだけどな〜。大学院に入ってからスタートダッシュで論文を書きたいなら、飛び級せずに力を溜めたほうがいいのである(その方が、いわゆる学振という博士後期課程の学生の身分でもお給料をもらえる制度の研究員に採用される可能性は上がるだろう)。

夕方は研究室の学生2人と合流してリクルートテクノロジーズ社を見学。東京駅に直結していてすごいロケーションである(ちなみに首都大からは中央特快一本で行ける!)。[twitter:@tsubosaka] さんが「メシでもどうですか」と誘ってくださったので(※@tsubosaka さん自身が転職されたというわけではない)、久しぶりに学生を連れて「社会科見学」しようかと思ったのである。[twitter:@takahi_i] さんと久しぶりに(と言っても半年ぶりくらいか)お会いしたりして、相変わらずNAISTの話をしたりして、どんだけ松本研のことが好きなんだ、という感じである(笑)

リクルートのようにものすごい種類の膨大な量のデータを持っている企業こそ「ビッグデータ」を名乗ってよいと思うのだが、音声認識やコンピュータ将棋に起こったような、人間が機械(データ)に駆逐されてしまうような時代がこの業界にも到来しつつあるようだ。いわゆる文系の人たちも、一通り統計とデータマイニングについて学んだ方がいいのではないか、と思ったりする。ただ、たぶん、いわゆる文系の人に数学を教えるより、いわゆる理系の人にマーケティング等々を教えた方が早いようなので、いまから勉強してどうなるか、ちょっとなんとも言えないところだが……。(いま学生の人は、悪いことは言わないからちゃんと数学を勉強しておきましょう)

こうやってご飯を食べながらざっくばらんにお話しできると、自分も世の中がどういう方向に向かっているのか感じることができるし、学生には刺激になるだろうし、ありがたいことである。こうやって企業の方とお話しすると、大学にいる研究者として最先端の研究をしていることも期待されていることを痛感するので(場合によっては「我々は研究ではなく開発をしているので精度100%でないと使えない」などというフィードバックをいただくこともあるが)、今年度から来年度にかけてはここまでやってきたことを総決算し、来年度以降は少しずつ新しいテーマを開拓していきたい。