勉強会は自分が発表者になることで学ぶ場所

午前中はNLPセミナーで以下の論文を紹介してもらう。

  • Asuka Sumida, Naoki Yoshinaga, Kentaro Torisawa. Boosting Precision and Recall of Hyponymy Relation Acquisition from Hierarchical Layouts in Wikipedia. LREC 2008.

実はこの論文は以下の論文のフォローアップ論文で、両方1セットで読まないと内容が分からない。

  • Asuka Sumida, Kentaro Torisawa. Hacking Wikipedia for Hyponymy Relation Acquisition. IJCNLP 2008.

……のだが、どうやらこちらの論文は目を通していないようで、なんだかよく分からなかった。論文を紹介する側は紹介される側より詳しくないといけないわけで、関連研究には目を通しておいたほうがよいし、この論文のように、アブストラクトから明らかに「詳細はこちら」と書かれているなら、読むべきであろう(というか、よほど分かりにくく書かれているのでなければ、そっちの元論文を紹介した方がいい)。

これは何回か書いていることだが、教職の授業を取っていたとき「教育における非対称性としてよく知られている」という前置きで「教える側は教わる側より多く学ぶ」という話があった。学部2年生であった自分などは、教える側は知っていることを吐き出すだけで、教わる側はそれを吸収するのだから、教える側は学ぶことがなく、教わる側が一方的に知識が増えるのではないかと思っていたのだが、そうではない、と知って驚いた。実際教える側に回ってみると毎回思うのだが、教えようと思うと教わる側の10倍くらい詳しくないと教えられないので、足りない分は毎回必死になって勉強しているのであり、「教える側は教わる側より多く学ぶ」というのには激しく同意する。研究室内で論文紹介をしてもらったり、基礎勉強会で演習問題を説明してもらったりするのは、他の人に教えるという経験をもっと積んでほしいからであり、そのためにはちゃんと準備して臨んでほしい。

話は変わって、最近思うのは、ウェブマイニング(テキストマイニング)は必ずしも機械学習を使う必要がなく、簡単な統計の知識と HTML や CSV などのデータ形式、そして正規表現程度が分かれば研究開発できるので、とっつきやすいのかなということである。逆に言うと、ちゃんと機械学習の知識があってやっている人は(昔はみんな分かっているのかと思っていたが)実はそんなに多くないようで、分かっているだけでも重宝される場合があるみたい(分かっているふりをしてできそうもないことを大言壮語されると、周囲に悪影響がありそうだが)。かくいう自分も、どういう目的関数をどのように最適化しているか、なんてことを意識するようになったのはD1の後半だし……。松本研にいて本当によかったと思う。他の大学・研究室ではあまり機械学習の勉強をしていないようなので、少なくともうちの研究室はしっかり機械学習の基礎を身につけてもらってから送り出したい。

お昼を挟んで午後は研究会で進捗報告。みんな研究的なレベルで煮詰まっているというよりは、プログラミング的なレベルで詰まっているようで、さすがにこれはそろそろ介入しないと卒業が危うくなってきている気もする……。

自分は学部時代に3年留年をしていて、留年したら人生は変わるがそんなに大差ないと思っているので、学生を絶対留年させたくない、と思っているわけではない。従って、求められる水準に達していなかったら、機械的に留年させてしまいそう(さすがに周りが止めるだろうけど)。水準を緩めるよりは、水準を満たすための支援を惜しまないほうがよいと思うのである。

あと、研究を毎日していてうまく行かないのは仕方ない(研究の性格上、常に結果が出るわけではないから)が、研究室に来ないで研究やプログラミングが分からないとか、アルバイトをしたりして時間がないとかいうのは情状酌量の余地はないかなぁ。研究って研究室に来て同期や先輩、教員に聞いてすぐ問題を解決してさくさく進めるものだし、来なかったら進まなくても仕方ないし、来る努力をしてくれないなら助けることもできないわけで……。あと、アルバイトをしないと勉学が続けられない、という学生には同情するのだが、自分も学部の後半からは親から援助してもらってないし(一時的に実家に戻らせてもらったり、D2の結婚式のときちょっと出してもらったりと、全く助けてもらっていないわけではないが)、親に仕送りをしているなどというのでなければ、なんとかなるんじゃないかと思うのだけど(NAIST時代、奨学金を借りてかつ研究室でアルバイトをし、親に仕送りしているという同期の話を聞いて、自分なんて親に仕送りをしなくていいだけで、とても恵まれていると思った)。

ともあれ、研究会の終了後、みんながプログラミングなど詰まっているところを一通り見てみたりして、時間は短くてよいのでもっと集まらないとな〜と思った。