鍼治療にはプラセボ以上の効果はない

TBSオンデマンドで、見逃した半澤直樹を見る。1話1話が重いので、見るだけでしんどい。でもこうやって好きな時間に、家から一歩も出なくても番組が見られるのは便利だなぁ。映画を見に行くと2人だとけっこうかかるし、疲れるし。テレビで見れば無料じゃないか、と思うかもしれないが、自分はCMを延々見させられるくらいなら1番組数百円払ってもいいし、その方が楽だな〜。iPhoneのアプリを買うようになって、少額課金に対する抵抗感がなくなってきたせいかもしれないが……。

先日本屋に行ったら並んでいた、サイモン・シンらによる「代替医療解剖」を読む。単行本が武蔵野プレイスの図書館にあって、借りようかと思っていたのだが、やはり文庫版のほうが遥かに読みやすい。ウェブブラウズができない電子書籍リーダーを買った方がいいのかな〜。

代替医療解剖 (新潮文庫)

代替医療解剖 (新潮文庫)

同書によると、二重盲検法などを使って検証した結果、ホメオパシー、鍼、指圧、カイロプラクティック、ハーブ療法のほぼ全てはプラセボと有意差がなかった、ということで、ある意味納得ではあるが、ここまで徹底的に検証しているというのは特筆に値する。

自分は卒業論文で (より正確に言うと、1回目の4年生の卒業論文で……3回4年生をやったのである)、西洋医療における鍼の受容について書こうとしていたので、こういうテーマには興味があった。というのも、WHOが鍼の効果を限定的に認める声明を出していて、アメリカでも保険治療に一部使えるのだが、これを切り口に、いわゆる東洋的な医療がどのようにアメリカやヨーロッパで受け止められているのか、を検証してみたかったのである。

ただ、「代替医療解剖」はその後の代替医療の顛末が書かれていて、実はWHOのそういう判断につながった要因の一つと考えられる、鍼を打ったら麻酔なしでも手術ができたとセンセーショナルに報道したBBCの番組があるのだが、その映像は中国で撮影され、裏で痛み止めを使っていたヤラセの映像であったとのこと。WHOの声明も、主に中国で「効果がある」と発表された論文に基づいて作成されたもので、二重盲検法などを使って詳しく治験したところ、基本的にほぼ全ての疾患でプラセボと有意差がなかった、ということである。鍼治療で言う「プラセボ」は、薬と違って明らかではないのだが、そもそも鍼をささないで鍼をさされたかのように感じる特殊な器具の発明で画期的に進んだらしい。(他にも、効果があると言われている経穴以外に刺す、というものあるが)

鍼治療にはプラセボ以上の効果はない、というのは残念なところだが、これだけの実験結果がそれを示しているのだとすると、受け入れざるを得ないように思う。もっとも、プラセボは非常に効果があることが分かっている(もちろん疾患と程度による)ので、効果を信じていればプラセボ程度には効くのであれば、それでもいいような気もする(筆者らは、疾患によっては通常の医療ならすぐ直るのに、代替医療に走ることで手遅れになるケースがあることや、あるいはプラセボでいいなら治療費はほとんどかからないはずなのに高額の費用を保険を含めて社会が負担するのは不適切ではないか、ということを指摘しているが)

あと、「薬には副作用があるはずだ」という思い込みで、偽薬を投与されているのに「副作用」が出る「ノセボ効果」というのもあるとのこと。人間って複雑にできているんだなぁ。