学部教育デビュー

着任して1週間しか経っていないが、さっそく初講義。首都大の教授・准教授は基本的に学部生の授業を年間3.5コマ (1コマ=15回の授業)、大学院生の授業を1コマやるそうなのだが、1年目ということで少し免除してもらって、今年は学部生1.5コマ、大学院生1コマでよい、ということになっている。配慮していただいてありがたい。先日の言語処理学会でいろんな大学の人に聞いてみたところ、准教授で年間4.5コマというのは (NAISTのような一部の研究大学を除く) 国公立大では多過ぎも少な過ぎもせず、標準的なコマ数のようである。

しかし、これまでNAISTでは半期にわたる授業をしたことがないので、資料を作成するだけで四苦八苦。ちなみに教える科目は学部3年生向けの「情報理論」(エントロピーとか符号化とか) である。どういう授業にしたいか、というイメージはあるのだが、技術と時間が伴わない感じ……。最近自然言語処理の分野で准教授になられた方々がしっかり講義をしてらっしゃる様子を拝見すると、なんだかこういう形式の情報伝達に自分は向いていないのではないか、と思ったりもする。もっとインタラクションがあるような演習形式やチュートリアルだったらいいのだが、大人数を前に一方的に話すようなのは苦手なのである。

とはいうものの、今学期はとにかく毎週スライドを作成して授業をするしかないし、腹をくくって淡々と仕事に慣れよう。初めての授業をしてみて分かったが、首都大のこの学部では、あまりスライドを使って授業をしていないらしい?(講義室も、スライドを使う前提で作られていない) NAISTでは99%の授業がスライドを使ったものだったので、情報系だったらみんなスライドを使うものかと思っていたのだが……。

午後は同じく学部3年生向けの必修科目「応用実験」という演習の担当。最初の回はガイダンスということで、進路選択に関する招待講演があったのだが、先生方が学部生に向けて「学部卒で就職するといかに不利か、大学院に進学したらどんなにいいことがあるか」を力説されていて、カルチャーショック。大学院なんて行きたい人が行けばいいと思うし、無理に行くことはないと思うのだが、国公立の理工系ではほとんどみんなが行くものだと思っていたので、首都大の学部生の7割が大学院に進学する、というのは、ここまで言って達成されているものなのか、とびっくりする。

地理的には首都大だと優秀な学生が東大や東工大に抜けてしまうのは仕方ないし、そもそも大学院進学の中で迷うならどんどん東大でも東工大でも行ってくれてかまわないと思うのだが、状況はそんなに単純ではなく、首都大は (都立大時代からも) それなりに企業から評価されていて、学部卒でも大企業から引きがあって就職できてしまうので、優秀層が就職を希望してしまう、というのが問題らしい。確かにそれは (ある意味嬉しい悲鳴であるが) 悩ましい状況である。

ガイダンス終了後、他の担当の方々とお話し、いろいろと情報交換。なるほどなあ、と思うこと多々あり。やっぱりいくつかの大学を経験する、というのは重要かもしれない。いろいろと現在の状況と課題をお聞きし、なんで自分が採用されたのか、自分がどういうところでこの大学に貢献できそうか、分かってきた感じ。まさしくこういう役回りが生涯で手がけたい仕事の一つだったので、運がよかったなと思う。

午後、プリンタ等々の受け取りと設置。コピーカードを受け取ったり、教室や会議室の予約システムのアカウントを作ってもらったりもする。仕事が始まってから1週間やそこらでできるのは早いとは思うのだが、着任してから1週間経たないうちにこれらの準備ができていないとにっちもさっちも行かないような仕事がどんどん積まれていくのはちょっと恐怖だったので、一応ほっとする。南大沢が本部になっているので、南大沢とのやり取りが発生するような仕事は基本的に時間がかかるようだが、一つの大学に統合されて効率化されているのかな、これ……。