うまく活用すれば研究には小講座制が適している

午後から立川なのだが、午前中は少し時間があったので、T橋と池袋のジュンク堂裏手の cafe pause でお茶。相変わらずで安心した (笑)

サバティカルで海外に行く話とか、子どもの話とか、教員公募の話とか、研究費の話とか、いろいろする。こうやって学外の人と話すといつも思うのだが、自分の境遇とそっくりな人は非常に稀なので、いろんな人といろんなときに話すことが大事で、思いがけず「そうだったのか〜」と気がつくことがある。あと、様々な環境でそれぞれがんばっている姿を見ると、とても勇気付けられる。自分だけではないのだと思うのである。

しかし私立大学の理工系の学部でも、任期なし助教で公募したら応募が100倍を超え、3年の任期付きでようやく数十倍に減ると聞くと、ガチ公募に通るのは本当に厳しいのだなと痛感する。道理で応募してもほとんど書類選考すら通過できないわけだ……。松本先生は「うちが助教を公募しても数十倍行くことはない」とおっしゃっていたが、たぶん分野をどこまで限定して公募するかによるのと、パートナーや親の事情などで首都圏を離れられないといった事情があるだろうし、情報系の誰でも応募できるくらい広い公募で、なおかつ首都圏だと応募が殺到するのであろう。

助教で研究室を任されるというのは、独立した研究ができるという意味ではいいのかもしれないが、研究費の申請書の書き方も教わることができないとか、研究室の運営も手探りだとかいうのを聞くと、博士号取得後も松本研でしばらく教員として過ごさせてもらったのは、とてもありがたいことなのだなと思った。研究費の申請書もだいぶ書いたし (分担の申請書を見せてもらったり、一部書いて添削してもらったり)、たった3年で指導した院生数が40人を超えるというのも大きな研究室ならではだし、他ではできない経験なんだなぁ。(もちろん、若いうちから独立して研究室を立ち上げるのも、得難い経験だと思うが)

午後は新宿経由で立川に移動。統計数理研究所で開催される「最先端構文解析とその周辺」に参加するためである。4人のスピーカーのお話、どれも勉強になる。(形式言語の話はイメージしにくく正直つらかったけど……。上記ページからスライドが公開されているのでまた見てみよう) このあたり、そのうち一度自分で作ってみたい。

休み時間に松本研 OB の方々とお話。NAIST ができたばかりにいらしたそうで、来年が松本研20周年記念なので、松本先生がイベントを開催したいと言っていたことをお伝えする。秘書さんも、そろそろ準備しないとねえ、とおっしゃっていたのだが、いつどこでどのように開催するのか、早いところ決めないといけない気がする。

終了後、実はほとんど時間がなかったので、そそくさと立川へ。[twitter:@hjtakamura] さん、[twitter:@conditional] さん、[twitter:@cacaho] さんとモノレール経由で立川駅立川駅から先はバラバラで、たまたま @cacaho さんと同じ方角だったので、八王子経由で横浜線。日野で急病人の対応があったらしく、中央線が遅延・混雑していて往生したが、八王子から先の新横浜線はそんなに混んでいなかった。

@cacaho さんから、松本研は勉強会をどうやって回しているんですか、という話を聞く。昔 (= 自分が学生だったころ) はもっと博士の学生がイニシアティブを取ってやっていたような気がするのだが、最近は基本的にスタッフが主導しているので、もう少し博士の学生の人たちにやってもらったほうがいいのかもしれない。スタッフがいなくても回るようになっていたほうがいいし。

助教の仕事について話していると、講座制と科目制の話になったが、なんだか自分も理解があやふやだったので、調べてみると、戦前の帝国大学で主に行われて来た講座制は、1名の教授を頂点して助教授-講師-助手という階層構造で、一つの分野を研究する体制で、NAIST はいまも (小) 講座制を取っている。それに対し、戦後は新しい分野の研究が育ちにくいという弊害のため、いくつかの小講座を合併して1つの研究室とする大講座制に移行しているところもある。一方、そもそも講座制がなかった新設の大学を中心に、科目制という、特定の授業科目に対応する教員 (教授や助教授) を置いてその分野を教育する体制が発達した。こちらも科目を中心とした制度であるため、教員が引退するとき新しい科目を作りにくいという弊害があり、近年は複数の科目を束ねた大学科目制 (「大学-科目制」ではなく「大-学科目制」) に移行したところも多い。

外から見ると大講座制と大学科目制とあまり変わりがなく見えるし、実際同じ大学でも学部教育は大学科目制で大学院教育は大講座制 (教員は大学院所属で、学部の教育は兼担) になっているところもあったり、大講座制から大学科目制に移行したりする大学もあり、大講座制は研究重視、大学科目制は教育重視という大まかな違いはあるものの、運用面ではそんなに違いはないように見える。また、文科省でも講座制と科目制は実態にそぐわないとして10年ほど前に廃止したので、いよいよ区別に意味がない。

一つの分野をコツコツと研究することを考えると、専門を同じくする研究者が複数人いて、なおかつ博士の学生も定着しやすい小講座制がベストだと思うのだが、学問分野も新陳代謝するし、(博士後期課程の学生に対するネガティブキャンペーンの結果もあるかもしれないが) 多くの学生が修士で修了することを考えると、大講座制 (大学科目制) の大学が増えているのも時代の要請なのかもしれない。

時間があれば立川で夕ご飯でも食べて帰れるのだが、18時までイベントがあると、なかなか関西には帰りにくいなぁ。(終電的には立川20時くらいまでOKだとは思うが、翌日が朝からだと……)