アメリカともイギリスとも違うニッポンの大学院

朝起きて涼しくて気持ちよかったので、思い立って伏見桃山城に行く。午前9時だが、けっこう他にもジョギング風あるいはウォーキング風の人がいる。

家からは片道30分というところ。夏は暑く冬は寒いので、なかなか通年で来ようという気にはならないのだが、身体を動かすにはよい季節だな〜。

家で寝転がりながら「アメリカの大学・ニッポンの大学」と「イギリスの大学・ニッポンの大学」を読む。

どっちも知っている話が大半であったが、手軽にこういう話が読めるのはよいので、あまりそれぞれの国の大学のシステムを知らない人にはお勧め。しかしなんと言ってもおもしろいのは、筆者が博士号を取得後どのようにしてアメリカの大学の教員になり、どのような授業になったのか、そして20年弱の東大での教員生活を経てどのようにイギリスの大学の教員になり、どのようにオックスフォードで生活しているか、という話。

イギリスのユニバーシティとカレッジの違いも、こんなふうに違うのか、というのが「中の人」目線で描かれていて、とても楽しめた。自分は学部生のとき交換留学でシドニー大学に在籍していたが、オーストラリアは基本的にイギリスに似た教育制度なので、カレッジ制を除けばユニバーシティ部分 (講義とチュートリアルのセットで1週間の授業が構成されていて、チュートリアルでは山のような読書課題が課される) はほとんど同じようだが、むしろカレッジがあるところがイギリスの古くからある大学の特徴なのかなと思った。

日本でイギリスと同じようなことをやるのは難しいと思うが、NAISTや国際教養大のように、都会から離れたところにほぼ全寮制に近い大学を作り、在籍中はひたすら勉学・研究に打ち込める環境を作る、というのは一つの方向性だと思う。残念なところは、そういうことに挑戦している大学は日本でも少なくないと思うのだが、成功しているところとそうでないところとあるので、うまく行かない理由、うまく行っている理由をそれぞれ分析する必要はある。理工系であればうまく行くというわけでもないし、人文系だとうまく行かないというわけでもないので、キーポイントは分野ではないとは思うのだが……。

夕方、iPS細胞で著名な山中さんがノーベル生理学・医学賞を受賞したという話。NAIST的にはこうやって在籍した人が各地で活躍してくださるのは嬉しいことである。ニュースではNAISTのことは華麗にスルーされていることが多いのだが、山中さんは事あるごとにNAISTに来たことで研究ができるようになった (NAISTの前にいた日本の大学は、研究ができる環境ではなかった)、NAISTには感謝している、ということを強調してくださるので、大変ありがたい。

休日なのに大学のウェブページもものすごい勢いで更新されてびっくり。ちなみに「生理学・医学賞」というのが本来のノーベルの遺書に書かれていた順番で、生理学というのは生物の基礎理論を研究する由緒正しい学問なのだが、なぜか日本語にするときは応用である医学のほうが先に来ることが多く、今回の報道でも「生理学・医学賞」と報道していたのは日経くらいである (NAISTのページや文部科学省のページは、「生理学・医学賞」)。これをきっかけに、各メディアも「生理学・医学賞」にすればいいと思うのだが……。

奈良先端大はできてから20年経ちました「勉強かできる」のと「研究ができる」のは全然違うでも紹介してきたが、「大発見の思考法」

「大発見」の思考法 (文春新書)

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は優れた研究をするためのヒントがたくさん書かれているので、学生の人たちはぜひこの機会に読んでみるとよい。