日本人に向けた内容のローカライズも意味がある

朝から京都を出て東京へ。7時半の新幹線だが、始発でないだけでだいぶ楽である。

午前中は六本木。この半年ほどもやもやとしたものがあるのだが、最近の悩みは (助教になった1年目の悩みよりは) D3のころの悩みに似ている気がする。答えはまだないのだが、いろいろと話を聞いてくれる人がいるだけでとてもありがたい。

午後は神保町。せっかく東京に来たので本屋に寄りたかったのだが、荷物が多くて断念 (駅のロッカーに預けるくらいだったし)。代わりに喫茶店で「ソフトウェアの世界でキャリアを築く」

ソフトウェアの世界でキャリアを築く Making it Big in Software

ソフトウェアの世界でキャリアを築く Making it Big in Software

を読む。ソフトウェアエンジニアとしてどのようなキャリアパスがあるか、ということをいろいろなインタビューを織り交ぜて書いている本。知識としては参考になるが、アメリカでの話なので、日本にそのまま適用できる話かというとそうでもないだろうし、分量の割には読むべきところは少ないかなぁ。そもそも類書がないので、そういう意味では貴重な情報源ではあるが、日本固有の事情がもっと書いてあるといいのにな〜。

そういえば、以前企業で自然言語処理関係のお仕事をされているエンジニアの方とお話をしていて、論文は読むが、査読付き国際会議に通った論文であるかどうかはけっこうどうでもよく、むしろ和文論文誌に通ったような最先端と比べると多少「枯れた」手法のほうが、安心して自分たちでも実装して使える (社内で説得しやすい) という話をお伺いして、カルチャーショックであったがおっしゃることもなるほどという感じで、日本語で研究成果を発表する、ということにも一定の意味はあるのだな、と思った。

日本人のエンジニアも英語の論文を読むべきだし、世界的な注目度を考えると最初から英語で書くべきだ、という考え方もあるだろうが、自分は日本で研究開発するなら日本人にローカライズするというのもそんなに悪くないと思っている。(結局日本のエンジニアをどこまで重視するか、ということかもしれないが)

夕方は人工知能学会の編集会議。議題が盛りだくさん。自分のような新人 (学生委員含む) からシニアな方までいらっしゃるのだが、難しい問題は議論が尽きない。でもこういう議論ができるというのは健全なことのように思う。

夜は平さんと東京駅でご飯。連休前の金曜日だからか、お店がどこも満杯。なんとか着席してみたが、今度は新幹線 (エクスプレス予約) の変更で、21時以降の便は指定席もグリーン車も埋まっているようで、びっくりする。普段あまり意識しないが、世の中は曜日で回っているんだなぁ。

ご飯を食べつつ、平さんがポスト経験主義の言語処理を企画されたときの話を伺ったりする。人工知能学会誌の特集はいつもおもしろいのだが、言語処理関係でこの原稿を上回るような特集を組むのは相当ハードルが高い :-) ずっと暖めていた秘蔵の企画だったそうだが、自分もこういう刺激的な特集が組めるよう、頭の片隅に入れておこう。

そういえば、今月号の人工知能学会誌も、「ロボットは東大に入れるか」特集と、コンピュータ囲碁特集で、どちらも興味深かった。まだウェブに目次が上がっていないようだが、こちらの記事をご覧になると、雰囲気分かるかもしれない。コンピュータ囲碁モンテカルロ法の登場で一気に棋力が向上したようだが、結局いろいろと囲碁に関するヒューリスティックスを入れていかないとなかなか強くならないようで、そのあたりのブレイクスルーとその後がまとまっていて勉強になった。

ゲームと人工知能に関しては、先日自然言語処理の若手の会シンポジウムで招待講演をお願いした鶴岡さんの資料もどうぞ ;-)