「採択されなくてもやるんだ」という覚悟の有無が決め手

今年の未踏の公募が出ていたようである。これまで未踏と言うと年齢制限はなかったのだが、今年は2011年4月1日時点で25歳未満の人、つまり未踏ユース相当の人たちを対象にしている。元々自分は未踏に関しては未踏ユースだけでいいと思っていたので、これでいいと思う。学生の人たちからすると、年に数百万ももらえれば喜んで自分の使える時間のほとんどを使ってプログラミングしたりするし、今後なにをするにしても自分で作ったソフトがあるというのは自信になるし。

プロジェクトマネージャからのメッセージがこれまたおもしろい。他の人を幸せにすること、というのが大事、というのは自分も同感。好きなことをするなら、他の人を幸せにしないと (この2つは関係ない概念だが、だからこそ独りよがりにならないほうがよい)。

たとえば 増井さん曰く

審査基準:
既存技術の改良のような提案(e.g.「〜の高速化」)よりも、これまでできなかったことを可能にする提案・意外 性のある提案を重視します。社会を根本的に変えようという大それた提案でもかまいませんし、これまで計算機 が使われていなかった場所や状況における新しい応用でもかまいません。アイデアの新規性、有用性、エレガ ントさ、多くの人間を幸福にすることができるか、を審査基準とします。

あと 原田さん曰く

審査基準:
基本的にどのような分野でも、かまいませんが、 (1) 誰かを確実に幸せにするもの。 (2) 誰かが不幸にならないもの。 という考えで審査します。
採択されたから実行するという態度はダメです。 採択されなくてもやるんだ、という人じゃないと、世の中を本当には変えられません。

後藤さん曰く

審査基準:
以下のような提案を高く評価します。(中略)

(2) 愛を感じさせる提案
提案したソフトウェアを、どれぐらい愛せますか?その「作りたくてたまらない」「欲しくてたまらない」という
気持ちは、提案書やプレゼンから伝わってきます。そして、それは人の心を動かします。

(3) 本気な提案
未踏に応募する皆さんはそもそも本気だと思うのですが、「採択されたから作る」のではなく、「採択されな くても何とかして作ってやる」くらいの本気度をアピールしましょう。本気だったら、いてもたってもいられな くて、いろいろ調べたり何か準備していたりしますよね。その何かに突き動かされている感じが、優れたソ フトウェアを作るときにはとても大切です。

首藤さん曰く

審査基準:
・情熱 自分が提案するテーマを愛していないことには始まりません。
・期待感 こいつは何かやってくれる、と感じさせてください。そう感じる理由はいろいろあります。高い技術力、人を 巻き込む力、あっと驚かせる言説、緻密な論理構成など。そのどれもが合格点であるよりは、ある一点が 特別素晴しいことの方に価値があります。

この「採択されなくてもやるんだ」という意気込みは大事で、これがないとやっぱり提案に魂がこもらないというか、こういう意気込みがなくて落ちてしまうプロジェクト(の申請書)はたくさん見てきたし、自分も研究計画書を去年両手で数えるくらい書いて落ちて分かったのは、「採択されなくてもやるんだ」という覚悟の有無が決定的だということ。細かい申請書の書き方の how to なんかは瑣末な問題で、一番重要なのはそういう情熱だと思う。

極めつけは石黒さん曰く

審査基準: (中略)
・全く役に経たないシステムの提案
一見役に立たないシステムでも,認知科学的,哲学的に非常に意味のある場合があります.そういった,人や社会の本質を知ることができるようなソフトウェアやシステムの提案を期待します.

これ、自分はとても好きである。こういう「一見役に立たないシステム」の提案、(本当に毒にも薬にもならないのはさておき) おもしろいものがときどきあったりするので、下手に役に立つことを意識して流行ものに飛びつくより潔いと思う。悪用できない技術は偽物であるにも書いたが、普段とちょっと違った軸で物事を考えられる力というのは重要だと思うのである。

というわけで、25歳未満でなにか作りたい人はぜひ挑戦してみるとよい。具体的なプロジェクトは相談に乗るので、メールでも Twitter でも直接でもお気軽にどうぞ。