寿司屋の修行に入ってフランス料理を作りたいと言う若者

今週はオープンキャンパス関連の仕事がたくさんあってけっこうしんどい。この2週間で20時間くらい使っている気がする。研究のほうも正念場。

午前から午後にかけてひたすら添削。だんだん直すべきところが減っていく。全体的に第2-3稿あたりに突入中。自分は水曜日の昼に盛岡に旅立ってしまうので、月曜日の段階で第4稿が手元に出揃っているとよいのだが……

何回も紹介しているが、松尾ぐみの論文の書き方にあるように、とにかく論文は第1稿をなにがなんでも早く仕上げ (元になる日本語の論文があるなら、まずやることはひたすら日本語がなくなるまで英語に直す)、あとは最初から最後まで何回通して直すか、というバトルなので、とにかく最初から最後まで埋めることを最優先する。

陥りがちなケースとしては、ずっと関連研究だけ書いて先に進まないとか、実験のところから先が埋まらないとかあるのだが、そう固いことは言わず、とにかく埋まらないところは「こんな内容が入る」ということを書いておき、全体を完成させることが第一。

あともう一つ、ページ数制限がある場合、最初からそのページ数にぴったり収めようと思って書くと(つまり書いては削り書いては削りしていると)全体の整合性やバランスがとれないので、最初は入れるべき内容は全部入れ、規定の枚数+1-2ページくらい書いてあとから不要な箇所を削ったり、重複している箇所をまとめるほうがいい。

逆に言うと、書くべきことを盛り込んで規定の枚数+2ページくらいにならないような場合、そのページ数設定はその研究に対して適切ではないのだと思う。8ページ書けるなら、まず9ページか10ページになるまではひたすら内容を追加して (4ページなら6ページくらいね)、そこからが勝負なのである。

とにかく最初はひたすら書くべし!書くべし!書くべし!

(上からの引用)

論文の完成度が十分上がってない状態を簡単に判断する方法があります。ページ数の遷移です。完成度の高い論文は、例えば、10ページの原稿であれば、一時的に12ページくらいまで膨らんで、その後、不必要なところを削除、不十分なところを追加する過程を経て、10ページぎりぎりに持っていきます。規定のページ数に届かないのは問題外です。ページ数の時間遷移を見たときに、1ページ⇒…⇒8ページ⇒9ページ⇒10ページ⇒投稿という、ページ数単調増加論文は完成度を上げきってないです。良い論文は、ページ数が一旦膨らんだ後、不必要な部分が削られ、最終的に規定のページ数いっぱいになります。単調増加の後、圧縮と拡張を何度か繰り返すことで、書くべきことが完全に書かれ、無駄な部分がなくなるのです。

論文執筆の最後のフェーズ、第6稿とか第7稿の修正では、規定のページ数をはみ出る最後の数行をどこで詰めるかという作業になります。もう、どの部分も重要なので削れません。どの一文も大切です。

あと、これはもしかしたらこれまで書いてなかったかもしれないが、共著者からコメントをもらったら反映し (理由があれば修正しなくていいし、修正しなかった理由を逆にコメントした人に伝える)、反映し終わったらまた共著者に改訂稿を渡す、というのが(自分的には)ここで言う「第n稿」なので、ずっと原稿を一人で抱え込まず共著者にどんどん送ってほしい。

19時から言語教育勉強会。@seijik42くんの進捗報告。これまで聞いていた問題設定と微妙に違うので「あれ?」と思ったが、松本先生とのやり取りを聞いたりしていて背景が分かってくる。やりたいことは分かったので、あとは実装か〜。

Chantokun効果で松本研に入って言語教育をやりたいという人が増加中らしい :) 言語教育への自然言語処理の応用はしばらく自分と松本先生どちらも続けるだろうし、研究室でどういう研究をしているのか受験前に調べてきてくれる受験生は歓迎である。実は、研究室でなにをやっているのかほとんど調べていない学生もときどきいて (自分の学生時代を思い出すとあまり人のことは言えないが)、「そのテーマだったらうちじゃなくて XXX 大学の YYY 研究室も検討するとよいですよ」と伝えることもある。

広い意味では自然言語処理だから、一応どんなテーマを志望してくれてもいいのだが、日本料理屋に弟子入りするのにフランス料理を作りたい、と言っているシェフ志望の若者のような感じで、ちょっとは志望先の研究室の特徴(得意分野)がどういうところかは、小論文を書く前に調べてもいいのでは、と思ったりするのである。

もちろん、うちに来たら全員寿司を握れ!と強制するわけではないし、ときどきは全然違うことをやりたいと言う人が独創性の高い研究もしたりするし、得意分野を知ってそれでも「自分がやりたいこのテーマはそちらの研究室ではメインのテーマとしていないようですが、自分で先輩やスタッフを巻き込んで研究グループを立ち上げてがんばります」というくらいの馬力があるならむしろ歓迎で、いずれにせよそれを知るためにオープンキャンパスに来たりするのはとてもよい機会なので、受験希望で NAIST にまだ来たことがない人は、悪いことは言わないので希望する研究室に一度来てみるとよいと思う。今週末の土曜日、10:00-17:00。(←長々と書いたが、この宣伝が書きたかった(笑))