大学で教えるということ

週末はどうしても寝暮らしてしまう……。今日もマッサージに行ったが、そろそろ暖かくなってきたし、回復してきたかなぁ。

今年読んで紹介しようと思ってできなかった本、「ベスト・プロフェッサー」を紹介。今年現時点まででのベスト3に入る好著。

ベストプロフェッサー (高等教育シリーズ)

ベストプロフェッサー (高等教育シリーズ)

すぐれた大学教員はどのように教えているのか、という考え方を記した本。あの「これからの「正義」の話をしよう」
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

のサンデル教授も登場。一言で言うと、教育とは自分の持っている知識を相手に伝達すること(情報伝達モデル)ではなく、相手が学びたいという気持ちを呼び起こすこと、これに尽きる、というわけである。情報伝達モデルに従うと、たとえばテストでも「授業で教えたことをどれくらい記憶しているか」というようなチェックになってしまうが、それは「よい教育」と言えるのか? ということをいろんな側面から検討している。

象徴的なエピソードは、教員に「授業をお願いできますか」と聞いたとき、普通の教員は「週何コマか」「テストは何回すればいいか」「受講生は何人か」といったことを聞くのが典型的な反応だそうだが、「優れた教員」であると学生からも同僚からも見なされている教員は、「受講生はなにを身につけたいと思っているのか」ということをなによりも先に聞くそうだ。学生の認知モデルは簡単に変わるものではなく、ほしいと思っているものを与えるのが一番効果的だが、そこから初めて半期なり通年なりの授業が終わったとき、自分の考え方が大きく変わるような、それからの人生に影響を与えるような、そういう授業をこの本に登場する「ベストプロフェッサー」たちはしているということだ。

読む前は講義中心の授業を担当する教員向けの話かと思っていたのだが、研究室単位での教育が中心の教員や、修士・学部生の面倒を見ることが多い博士前期課程の学生にも多いに参考になる。翻訳がときどきいまいちだが(「関数」の意味の function が「機能」と訳されていたり)、本質的な部分の誤訳はないので、大学関係のみなさんに一読をお勧めする。(NAIST の図書館で買ってもらったので、NAIST の人は図書館で借りられるが、もう一冊注文して手元においておきたいくらいである)