渋谷ユーロスペースで「玄牝」を見てきた

午前中、起きたらすでに自分の予約していた新幹線に間に合うのが絶望的な時間だったので、予約変更。やはり iPad/iPhone のアプリでは変更の途中でアプリ/ブラウザが落ちる (新規予約はできる) ので、ウィルコムなら公式ページからできるはず、と思って挑戦したのだが、ID が入力できない。あれれ???と思ったが、よくよく見てみると JR 東海の発行しているJR 東海エクスプレスカード でないとだめらしい。自分の持っているのは JR 西日本の J-WEST カードだからだめ、と……。(※あとで調べたらウィルコム用の JR おでかけネットからアクセスすればいいらしい。紛らわしすぎる……)

仕方ないので予約変更のために e-mobile を1日(630円)契約。微妙だな〜。新幹線の中でも使うかもしれないから1日契約したのだが、結局使わなかった。せめて料金体系を契約時点からその日の24時までではなく、契約時点から24時間にしてほしい。

その後タクシーで上野へ。歩いても20分ちょいだが、ワンメーターで着くので2人で乗れば悪くない。2日だが上野は人がけっこういる。帰る人で混雑しているのかな〜。自分は渋谷へ。109を過ぎたところで NAIST の M2 の人と遭遇してびっくり。こんなところで偶然会うものなんだろうか……

時間つぶしに Bunkamuraモネとジヴェルニーの画家たちを観てみたり。絵画自体はあまりピンとこなかったが、ジヴェルニーという場所がモネの移り住むことによって芸術家たちの寄り集まる村になっていった、というのはおもしろかった。

あとアメリカでフランスの田園風景の絵画が好まれたのは、自分たちのルーツに対する憧れがあったからだ、というのもなるほどと思う。都会で育てば育つほど、田園に対する思いが強くなってしまうのかもしれない、と思ったりする (自分も含めて)。まあ、思うほど田舎に育っていない人は田園で生活できるわけでもないだろうし、実際数年滞在して何作か絵を描いたらあとはときどきやってくる人がほとんどで、住み着いてしまった人はあまりいないようだが……(その後起こった2つの大戦の影響もある)

夕方、ユーロスペースにて河瀬直美監督の玄牝を観る。産婦人科の話だというので観たいなと思っていたのだが、高の原で上映されたとき忙しくてついぞ観る機会がないまま終わってしまったのである。

映画としては産科のドキュメンタリーなのだが、自然分娩に「こだわる」人たちを描いたもの。母親学級のやり取りなんかを見ていると、まだ子どもを妊娠してすらいないのに通っている母親(?)がいて「先生に頻繁に診てもらえるよう早く妊娠したいです」と言っていたり、これはほとんど宗教ではないかと思って眉唾で見てしまう。

なんでこんなのを信じるの? と思うのだが、一例を挙げると、吉村氏は映画の中で「昔から自然にやってみんな無事産まれてきたんだから、現代医学は間違っている」という趣旨のことを言っているのだが、日本の妊産婦の死亡率の統計では1950年に10万分娩に対して176だったのが2000年には6.3へと減少し、周産期死亡率は1950年に出生1,000に対して46.6だったのが2000年には3.8となるなど、死亡率ははっきりと下がっており、「自然にやってみんな無事」というのはトンデモすぎて取り合う必要すらないように思う (そりゃ自然にやっても無事産まれた人は無事産まれたと後付けで言えるだろうが)。

結局のところ、彼の主張は (映画の中でも言っているが) 「現代医学をやろうがやるまいが助かるものは助かる、助からないものは助からない、助からないものを強引に助けてしまうから問題だ。妊婦も子どもも助からない場合は仕方ない。死ぬべき人は死んだほうがよい」という考え方が根底にあり、これに共感するかどうかが違和感のもとなのではないかと思った。

とはいえ、最後まで鑑賞してみると、これはそういう自然分娩を礼賛したり現代医療に疑問を投げかけたりする話ではなく、この医院を経営する「ワンマン」院長の吉村正氏の生き方を描いた作品なのかなぁと気がつく。

たとえば、スタッフ(助産師)たちの院長のやり方に対する批判が描かれたり、院長の娘が「お父さん病院に来る人にはものすごく丁寧で親切だけど、家族に対しては何もしてくれなかったじゃない、共感もしてくれなかったじゃない」「じゃあどうすればいいんだ」「どうもしてほしいわけじゃないの、ただ家族のわたしたちに寄り添ってくれればよかっただけなの」「そんなこと今さら言われてもどうしようもないだろう」と親子が激しく口論する様子が収められていたり、前半で吉村医院の風変わりなところを存分に描いておいて、最後にこういうところを持ってきて、吉村医院の両義性を鋭く抉っているところがこの映画のおもしろいところである。

帰りは品川からひかり。腰を痛めてからというもの、ほとんどひかりにしか乗っていないが、ひかりはひかりで悪くないな〜。日付が変わるくらいに奈良に戻ってくる。年末は雪が降ったと聞いてヒヤヒヤしていたが、車のフロントガラスが凍っていたものの、雪はなかったので一安心。