刑法39条と岩波新書

今日の研究会は法律に関する自然言語処理の話。

実は自分は学部のとき「教養学部」という学部にいたので、経済や法律に関する科目も選択必修だったのだが、取るべき単位数を数えるとどうしても経済学や法学の単位を取らないといけなかったので、前期課程2つ、後期課程1つ授業に出てみたことがある。民法に関しては、そういうわけで多少勉強したのだが、今日の話は刑法だったので、ちょっと新鮮。

そもそも法律に興味がない人は、民法とか刑法とかいう区分があること自体知らないかもしれない(というか大学1年生のときの自分がそうだった)が、刑法は大きく言うと国と個人との関係で、こういうことはやっちゃだめですよ、ということが決められているのに対し、民法は個人と個人の関係、つまりこういう問題があったときどうしましょうか、ということが決められている。

ニュースでよく「逮捕」とか「懲役3年」とか話題になるが、これは刑法で決まっていることであり、日常生活でよく見かけるいさかいごとについての取り決めである民法では、逮捕されることも刑務所に入ることもないし、(法人を除いて)罰金を払わされることもない(損害賠償とか慰謝料とかを請求されることはある)。

刑事モノとかサスペンスとかのテレビドラマで出てくるのは前者の刑法に関するお話であり、行列のできる法律相談所で出てくるのはまず民法に関するお話。

で、法律ってけっこう難しいので、一般人(裁判員精度も始まったし)が法律分かるようにするのは大事なんではないか、という話。もちろん、一般人向けじゃなくても、専門家向けでも判例検索とかできると嬉しいだろうなぁ。「このテーマで重要な判例を順に見たい」みたいな。用語も無駄に難しいし……「心身耗弱」という単語があるのだが、これは「しんしんこうじゃく(もうじゃく、と読みたくなるがそれは間違い)」と読む。そんな用語法律の文脈以外では使わないし、そういうような「日常用語と違う単語」などの同義語・類義語をいかに見つけるかも重要。(キーワード検索で適切なキーワードを入れられるのは、すでにだいぶ詳しい人である)

(この段落追記) そういえば刑法39条について触れるつもりで忘れていたが、これが「心神耗弱」に関する条文で、心神喪失していたら罪に問わず、心神耗弱していたら減刑する、という内容なのである。Twitter で呟いたら @Jv_forrestal さんから

39-刑法第三十九条- [DVD]

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をお薦めされたので、今度観てみよう(研究室で観たい人いたら一緒にゼミ室で上映会しましょう ;-) )。

あと連想検索といえば前 NII に行ったときにお勧めされた

爆笑問題のニッポンの教養 検索エンジンは脳の夢を見る 連想情報学

爆笑問題のニッポンの教養 検索エンジンは脳の夢を見る 連想情報学

を思い出したのだが、少なくともこの本に書かれている話(昔は妥当性があったのかもしれないが)によると「Google はキーワード検索だから検索単語(=クエリ)が出てこない文書はヒットしない、だから我々の提唱する連想検索が必要だ」というのは間違いで、最近はどの検索エンジンでも完全マッチ以上のことは普通やっているので、なんだかなぁと思う。全文検索だと完全マッチで作るのが基本(それでもクエリ展開とかクエリ拡張とかいろいろ研究されている)だから、その話も分かるのだが……。(法律用語でも同じように同義語や類義語の処理が大変そう)

法学(というか法の考え方)については

法を学ぶ (岩波新書)

法を学ぶ (岩波新書)

が勉強になった(と思う)。岩波新書なんて最近あまり買っていないのだが、岩波新書の青と黄には社会科学系のいい本がたくさんあるので、高校生や学部生のころは古本屋に行くとしょっちゅう新書コーナーを回っていた(100円程度で買える)ものだが、最近は新書ブームになってしまって、こういういい本が「新書コーナー」の他の賞味期限が短い新書に押されてなくなっていってしまうのは悲しいことである。

過去の岩波新書が入った Kindle があったら100万円でもお金貯めて買うと思う。Wikipedia の岩波新書のページにもある通り、青版は約1000冊、黄版は約500冊あるので、1500冊で100万円だと1冊700円くらい。たぶん電子化されていないだろうから、全部スキャンしただけになってしまうのだろうけど、それでも全部読めたらいいだろうなぁ。