大学院は自ら考え行動する人を養成するべき

年末の休みで以前買ったまま放置していた

勝つための論文の書き方 (文春新書)

勝つための論文の書き方 (文春新書)

を読んでみた。(これ自体は Amazon でお勧めされたから買ったもののように思う)

よくあるものの本には「論文には新規性がないといけない」とか「こういう論文はつまらない」とは書いてあるのだが、ではどうやったら新規性のある論文が書けるのか、という方法を提示している本は見たことがなかった。そういう意味で、この本は、著者が研究するときにはどういう発想(思考経路)でテーマを決めて、サーベイして、論文を書いているか、というケーススタディがたくさん載っているので、非常に意欲的でおもしろい。

記事の半分くらいは実際の講義の解説のような内容であり、卒論の指導をどのようにするかという具体例がたくさんあって、これはこれで(冗長ではあるが)参考になる。タイトルはあまり内容と関係ないし、このタイトルは正直いけてないと思う。出版社の紹介文も「点数のとれる論文・必ず通る企画書はこう書け! 教授や上司や銀行にウンと言わせるコツを、抱腹絶倒の例題を満載しつつ伝授する」らしいのだが、いまいちだなー。(もちろん学校でしか通用しないテクニックだと思われると買ってくれる人が減るので、いろんなパターンを想起させるのは重要ではあるのだが)

学生の分析としては

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

が、エッセイとしては秀逸。これを読んで具体的なアクションになにかつながるかといえば違うだろうが、無意識に影響するような文章のほうが長い目で見れば価値があるのだろうし、20年以上に渡って読み継がれているだけのことはあると思う。冒頭で、いまの学校では「グライダー型人間」が量産されているが、これは言われたことをうまくやれるだけの人間であって、自分で飛べるタイプの人間ではないので、ほんらい学校では自分で飛ぶことのできる「飛行機型人間」を目指さなければならない、という話があるのだが、これが20年以上前に書かれた本だとはとても思えないほど人間の摂理を語っているように思える。

論文の書き方(研究の仕方)の話に戻ると、指導教員や先輩に言われた研究ができるようなタイプの学生はグライダー型人間であり、確かにガイドに従ってなにかをする能力があるに越したことはないのだが、それができるからと言って自分で研究ができるわけではなく、逆に言われたことができるのが研究能力のあることだと誤解する人も多いので、弊害もあるように感じる。ではどうすれば飛行機型人間になれるかという解決策はこの本には載っていない(そういうのを期待する向きには1冊目の「勝つための」を読んでみるといい)のだが、逆に自分が学生という立場を離れて、学生はどうやったら飛行機型人間になれるのだろうかと考えると、なかなか難しい問題であって自分も結論はない。そもそも自分もグライダー型人間としてはそれなりに経験を積んできたと思うが、飛行機型人間としての経験があるかというと心許ない。言われた通りやるのはしゃくだし、言われた通りやっても言われた以上のことはできないだろうから、言われたのとは違う方法で実現できないか、ということはよく考えているのだが(笑) (とはいえほとんどの場合言われた方法がいちばんよかったりするのだけど)

Twitter でも @taroleo さん@shinji_kono さんの話を聞いたりして考えるのだが、どうすればいいんだろうなぁー。これも今年の課題。そういえば kono さんといえば自分は fj のころの記憶が非常に強いのだが、先日 M1 の人に「fj って知ってますか」と言ったら全然聞いたこともなかったようで、そうだろうなとは思ったが、時代の流れは速いものだなぁ。(そのうち「Twitter ってなんですか」「Mixi ってなんですか」「Facebook ってなんですか」という時代も来るかもしれないが、「MySpace ってなんですか」という人はもうすでにいそうである)