最後の授業

今週は体調が悪くて本の紹介を書けなかったのでまとめて。

今日は時間があったので(荷作りもせず……)「最後の授業」を見ていた。

最後の授業 DVD付き版 ぼくの命があるうちに

最後の授業 DVD付き版 ぼくの命があるうちに

講義自体は web でも見られるのだが、この本についている DVD は日本語の字幕がついているので、見るならこちらをお勧めする。「ここがだめだ」と言ってもらえるのは愛情があって成長してほしいからだ、とか、壁にぶち当たっても好きなら超えていける、とか、あと経験とはそれが達成されなかったときに得られるものだ、とか、いろいろいい言葉がたくさん。CMU はいい大学だ、と何回も言っていたが、確かによさそうな大学だなー。アメリカの大学に今から通っていいなら CMU に行きたい。

ちなみに最後の授業と言うとたぶん一般的にはアルザス・ロレーヌ地方の話のほうが(昔教科書にも載っていたし)有名だと思う。ただこれも

アルザスは以前からドイツ語圏の地域であり、そこに住む人々のほとんどがドイツ語方言のアルザス語を母語としていた。普仏戦争にも従軍したプロヴァンス(同地にはロマンス語系のプロヴァンス語がある)出身のフランス人であるドーデは、アメル先生に「ドイツ人たちにこう言われるかもしれない。“君たちはフランス人だと言いはっていた。だのに君たちのことばを話すことも書くことも出来ないではないか”」(その後に、フランツや生徒だけの責任ではない、国語をきちんと指導しなかった我々大人の責任でもある、と反省の弁)と言わせているが、生徒達が母語を話せないというのは有り得ないことである。この小説はあたかもアルザスをフランス語地域であるかのように、事実とほぼ正反対の設定の上で描かれている。

という話なので、そういうのを触れずに「国語」礼賛的な文脈で紹介されるのはどうかと思う。

あとはお勧め順にピックアップして。

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

は大学生・大学院生なんかで中高生に英語を教えている人や、中学・高校で実際に外国語教えている人に絶対読んでほしい1冊。たとえば日本人が三単現の s (takes とか does とか)を習得しづらいのは第二言語習得の研究で明らかになっていることなので、こんなところを間違えたとかどうかとかで目くじら立てて減点しないでほしい、というような話は自分も同意。ふんだんに最新の研究成果(2000年以降に分かった事実も含め)を盛り込んでいるので、読んでいて刺激になる。こういう本を自然言語処理の人も出すべきだよなあー。

グーグルが日本を破壊する (PHP新書 518)

グーグルが日本を破壊する (PHP新書 518)

は個人的にはおもしろかった。技術的なことも分かってらっしゃる、と思ったら前読んだジョブズの本書いたのと同じ人か……。書いてあること全部に同意するわけではないが、意欲的に将来を予測しているところが非常に好感持てる。ちなみにこの本はどちらかというと Google に中立的で、Google 知らない人は論外としても、Google 便利だね−、なんて単に使っている人も批判の対象で、Google が最適な結果を返していないことは分かった上でその次どうするか、ということを議論している。(でも日本の検索エンジンGoogle を超えるというのは疑問符がつくが……)

どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門 (新潮新書)

どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門 (新潮新書)

は会社の中でなにが法律的にセーフでなにが法律的にアウトか、というのを具体例を交えて解説している。

人が壊れてゆく職場 (光文社新書)

人が壊れてゆく職場 (光文社新書)

も同じテーマ(タイトルからその内容を予測するのは不可能だと思うのだが……)だが、前者のほうが遙かにおもしろい(具体的な事例もそうだが、まとめ方が鮮やか)。いろいろ法律で決まっている(そして法律で決まっていなくても判例がある)ものなんだなー、と思う(というか、知らないとこれは法律的にありえないことをされても「そういうものか」と思ってしまいそう)。

は実は「勝間本」と呼ばれるものは初めて呼んだのだが(なんか肌が合わなさそうに感じたので)、やっぱりこの人の本は自分には合わなかった。自分のインタビューとか Mixi のコミュニティに書かれた書き込みとかから抜粋してきて本を作ると大量に、そしてすぐにこういう本が作れるのだろうが、なんか深みがないというか……同じく多作でも斎藤孝

なぜ日本人は学ばなくなったのか (講談社現代新書 1943)

なぜ日本人は学ばなくなったのか (講談社現代新書 1943)

ほうが楽しかった。彼は意識的にブログは書かないとたとえば

私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

にも書かれているのだが、圧倒的な読書量に支えられているというだけでなく、やっぱり考え方の根底に明治的なものがあるところが「同じにおい」のするところなのかなぁ。旧制高校に憧れて勉強した、と書いてあったが、まさしく自分の通った武蔵中学・高校は今も旧制高校のような授業しているし……たぶん時代に取り残されてガラパゴス状態になると思うのだが、逆に外界と隔絶しているからなにか進化してすごいことになるかもしれないかな、とか思ったり。(あと同じコピペ本と言っても梅田望夫の本のほうがそんなに抵抗感がない……) まあ勝間本は何冊か買ってみたので、もっと読んでみないと分からないけど(いい本だと言われているものを読んでいないのでなんとも言えない)。

月曜日から出かけるので何冊か本を持って行こうと思うのだが、なにを持って行くかが考えどころ。すぐ読んでしまう本だと単なる荷物になってしまうし、逆に時間がかかる本だとたぶん読まないし……