インタビュー

ふらふらと web ブラウジングしていたら宮下尚(himi)さんのインタビュー発見(後編がおもしろいので後編にだけリンク)。

IBM の東京基礎研究所(TRL)にいらしたとは知らなかったのだが、現在アクセシビリティの研究をしているということで、読み入ってしまった。

役に立つものを作る、という意味ではユーザに対する影響が大きいところから手をつける(たとえばエラー分析して一番大きな割合を占めるところから解決していく)というのが常套手段だが、アクセシビリティは himi さんが書いているようにマイノリティに対する「思いやり」から出発するもので、

アクセシビリティっていうのはマジョリティでないところに対して、普通の人が使うものとは違ったものを考えなくちゃならないんです。人間はそういうところって考えないんですよね。でも、考えなきゃならないとしたら、今やっている仕事っていうのは非常にいい経験になったと思いますね。どういうことをやれば、実際に使っている視覚障碍者が困るかってことがわかるっていうのは、ちょっとした思いやりなんですよね。気づけば簡単に直せるんですけど、路上に段差があってもつまづくなんてことを考えないように、分からないんですよね。これは本当に難しいです。これって、どう人間が理解してどう読めばわかるかってことに気づくことなんですよね。そういう世界があるんだなってことを考えると非常に大きな研究といえますね。このブラウザ自身もかなりものすごいことになっていて、この動的コンテンツの中を操作したり、外からデータをあてたり、そういう意味ではテクノロジーは、すごい意味でのハッキングの域をいっているのもありますし、逆にユーザーに対しての思いやりを考えなくちゃいけないっていうこともあって、ものすごい両極端な2つを歩まないといけないんですね。本当に大変な作業になるんです。

(強調引用者)というように、結局両方大事なんだということだな。こういうところの研究って大変そうで頭が下がる(上記記事にも書かれているが、TRL には全盲の研究員の方がいてこういった研究を引っ張っていっているそうだ)。こんな研究できるってのはいい環境だなあ。

話は打って変わってシリーズ「存続できず、廃部に追い込まれた工学部」〜さらば工学部(4)。我々の所属する情報系は工学部の中でもかろうじて定員割れしていない「人気」分野だが、それ以外の分野は苦戦している模様(たとえば「東大生の電気電子離れ加速、企業の求む人材と乖離」〜さらば工学部(2))。

 東大工学部は再編の歴史を経てきました。学科再編のトリガーになってきたのが、学科の人気不人気でした。

 例えば、材料金属工学科(旧冶金)は改組しました。99年、材料金属工学科には定員61人に対して11人しか来ませんでした。冶金学科はマテリアル工学科に替わって、IT(情報技術)やバイオの材料も手がけるようになりました。そうして人気を回復させたのです。

 船舶海洋工学科、システム量子工学科(旧原子力)、地球システム工学科(旧資源開発)も、長らく学生の人気が落ちていました。産業が成熟したということです。これらの学科は2000年度に技術を経済にどう生かすかを学んでいくシステム創成学科として再出発しました。今や、1学年で130人を集める人気学科となり、工学部の最大勢力となっています。

自分などは「名前を変えたくらいでそんな学生寄ってくるのだろうか?」と懐疑的だったが、実際寄ってきているというので驚いた。(名前を変えただけではなくちゃんと中身の改革を伴う改組だったのだろう) 代ゼミでチューターをしていたときの同僚がシステム創成にいて、「大学院生は他大学の人ばかりでやる気ない。内部生は誰も上に上がらない」と言っていた(その後彼は学部卒で就職した)が、状況変わっているのだろうか? それとも学部の振降りと大学院とでは違う様相を呈しているとか……

 ところが、昨年度の進振りでは、電気電子系のAコース(エネルギー・グローバルシステム=電力など重電系)、Bコース(情報・通信・メディア=情報通信、ソフトウエア系)、Cコース(ナノ物理・情報エレクトロニクス=デバイス系)の3コースのうち、Bコースは定員を満たしたものの、AコースとCコースは定員に達しませんでした。

 進学の基準となる最低点も、前年に比べて落ちていました。進振りのダイナミズムの1つとして、進学者の最低点があります。進学に必要な成績がどれほどの水準なのかに、学生は敏感です。学生は進学基準の点数が低いところには行きたくないという心理があります。一度、この最低点が下がってしまうと、もう一度上がることが本当に大変です。

 今年の秋も、電気の学生の動向は変化してくるでしょう。3年前から比べると、やや上向いていると思いますけれども、ダメかもしれません。

こういうように「一度下がるともう一度上がるのは非常に大変」というのはどこでも聞く話だが、学生数が漸減している現況では、現状維持するだけでもよくやっているほうなのだろう。尻すぼみになってしまっている分野をどうやって維持するのか、という方策はもっと考えた方がいいのかも。(そもそも供給以前に需要もないのだから潰してしまっていい、という考え方もあるのかもしれないが、国のリスク管理的にはやばいんじゃなかろうか。個人は好きにしていいと思うけど)