若者言葉

「ギター」を「ター」と発音せず「ギター」と発音するのは平板化と呼ばれる現象なのだけど、今日自分のアクセントに関して「前から気になっていたんだけど、「ちょうきれい」とか「かなり簡単」とか言うのは若者ぶっているようでみっともないからやめなさい。もういい年して気持ち悪い」と言われてものすごくショックを受ける。

いまの自分にとっては「Lisp」「Haskell」「Python」「Ruby」のようなプログラミング言語は平板化するのだけど、それも「そんなふうに発音するのは脳みそ入っていなくて頭振ったらからんからん音がしそうな女子高校生くらい。あなたがするとものすごく違和感あるからやめて」とつれないお答え。ちなみにこう言われたのは1人だけではなくそこにいた2人両方とも「その発音は(自分がしていると)気持ち悪い」と言われたので、二重のショック。

名詞についてアクセントが平板化するのは、平板化が「専門家アクセント」とも呼ばれるように、一般的にあのコミュニティでよく使われる単語は平板化しやすい(「ギター」とか「バイク」とか「メドレー」とか)傾向があり、他にも専門家用語でなくても「電車」のように「んしゃ」と「でんしゃ」の2つはどちらも聞かれるという現象もあり、若者言葉ではなく昔(60年代くらい?)から言語学者の間では知られていた現象のようだ。

専門家用語と微妙な例としては「ドライバー」とか「パイプ」とかかな。「ドライバー」は運転者、ねじを回す工具、コンピュータであるハードウェアを動作させるために必要なソフト、どれも表すことができるが、「ドイバー」にはソフトウェアの意味はない気がする。逆に「イプ」は管のことを指すけど「パイプ」はコマンドの出力をつなげて渡すことを指すとか、言葉の意味の違いに対応することもあるかな。

駒場で音声学の授業を1年間受けてこういう平板化の話やら連濁(「さくら」が複合語になると「しだれざくら」のように濁る現象)の話やらを扱ったとき、毎回参加者全員ででこれはどう発音するかということをディスカッションしながらやったので、出身地方や年齢などによって言語的直観がかなり食い違っており、聞いて違和感があるかどうかは人それぞれだろうことは分かっているのだが、それにしてもそんなふうに今まで思われていたとは……。青天(せいてん)の霹靂(へきれき)。

とりあえず今日から程度を強める副詞には「超」とか「かなり」ではなく「大変」とか「結構」を使うことにします。今日は大変寒い。ミレイユちゃんは大変かわいい。芋ようかんは大変おいしい。この日記は大変適当。