非常勤講師はまるでボランティア

朝に1時間ほどメール処理。国際会議の原稿を見たいのだが、ちょっと時間が取れない。昨日は土曜日だから移動時間に見られるかと思ったら、行きも帰りも電車が混んでいて、それどころではなかったのである(汗)

そろそろ来年度の非常勤講師のお願いをしている時期なのであるが(自分は来年度も津田塾の非常勤を頼まれ、来年度も継続してやる予定)、侮辱的な報酬額の大学講師の仕事依頼がやってきた。その額なんと月2.7万円という記事がタイムリーに上がってきて、微妙な気持ちになる(ezoe さん、NAIST 時代に何かで隣に座ってお話しした記憶がある)。自分も非常勤講師を依頼したり引き受けたりする側で、依頼する場合はだいたい同じくらいの金額(経歴によって、教授相当か准教授相当か等で少し違うが、ほぼ同じ)であり、大学の規定額で申し訳ありませんが、大体これくらいです、ということを申し添え、金銭的な報酬は微妙だけど、本学の学生の教育に力を貸していただきたい、という気持ちでお願いしている。

そもそも先日も書いたように自分の大学からもらう給料は時給5,000円程度で、1.5時間 x 4 回 = 6時間で月2.7万円は安いとは思うが1桁違うというほどではないとも思う。自分は定常状態では月に6時間が授業自体の時間だとすると、授業資料がすでにあれば準備には月1-2時間、試験等に月2時間かかるくらいに収まるので、時給3000円くらいである。ただ、授業資料も特に事前になく、単発でお願いする場合は準備等の時間を考慮すると安すぎるだろうけど(自分も企業の方のコンサルはいま1時間あたり5万円で受けているし)。なので、非常勤講師をお願いする場合は、少なくとも2年はお願いするような形で継続して依頼している(2年目以降は1年目ほど準備の手間がかからない)。

教育は効果が分かるまで時間がかかるもので、大学院(修士課程)だとだいたい2年後くらい、学部だとだいたい4年後くらいにようやく「N 年前にやったこれはよかったか悪かったか」というのが分かり、そこで軌道を修正してもその効果が分かるのはさらに N 年後なわけで、そういうタイムスパンで考えてもらえる(N 年後の姿を見て「ああ、やってよかった」と思える)人が教育に向いていると思うのだが、単発の仕事だと思うと金銭的には見合わないというのはまさしくご指摘の通りだし、情報科学分野で博士後期課程に進学しても教員になろうという人が極めて少ないというのも仕方ないと思っている(アカデミア以外にも就職先はたくさんあるし、待遇も大学と比べるとかなりよい)。この状況を改善するには、分野ごとに教員の報酬を変えれば少しよくなると思うのだが、日本では大学教員であれば(同一大学内では)だいたい横並びなのでどうしようもない。獲得した研究費のうちの一部が給与に上乗せされる、というような形にすれば、研究費が獲得できる分野では少し上乗せできるので、まだましになると思うけど(そうなっていない大学が多いので、兼業で顧問契約を結んで報酬を得たりするのであろう)。

自分が博士の学生のころからずっと意見は変わらないのだが、情報系で教育にも興味がある人の合理的な選択肢は、博士後期課程に進学して学生のうちは海外を含むインターンシップに行きまくり(学部のうちは開発のインターンシップ、修士のうちは日本国内の研究のインターンシップ、博士になったら海外のインターンシップ)、博士号を取得したらイケてる企業に就職して今度はトップクラスの学生をインターンとして受け入れてバリバリ仕事をする、というような形だと思う。自分も博士号を取得したら企業の研究所に就職してそういう仕事をしようと思っていて、いろいろな事情により現在のように大学教員になり、これはこれで満足しているのだが、大学はもう少し教職員の待遇を検討した方がいいのではないかと思っている。何回か書いているが、専任教員の仕事を仕分けして非常勤・兼務(クロスアポイントメント等)の人との格差を減らし、教員の数を減らして職員の数を増やす、みたいな形で。専任教員の特権的待遇が切り下げられるような改革には、賛同が得られないかもしれないが……。