挑戦をし続けるのがカッコいい

お盆休みの週であったが、来週の月火が沖縄出張、水曜日が都内出張、金曜日が振替休日予定で日野キャンパスに出勤するのは木曜日しか取れないということと、自然言語処理の若手の会のシンポジウム(YANS)の口頭発表のスライドの提出期限が8/19であることを考慮し、今日にチェックをすることにしていたのである。

ほとんどの人はすでに OK を出していたので特に問題ないかと思っていたが、ここに来て実験をやり直している人もいたりして、完全に問題がないというわけではないようである。しかし発表の前に実験をやり直すのは(ミスが発覚してどうしようもない場合もあるが)あまりよくないと考えていて、松尾ぐみの論文の書き方 を10回くらい読んでほしいのだが、すでにある実験から言えるような主張を切り出すよう、ちゃんとストーリーを立ててほしいと思っているのである。(「この実験が足りない」ということで実験をやり直したくなる気持ちは分からないでもないが、そもそも本来それは〆切の2ヶ月くらい前に検討してどれをどの順番でやるか優先順位をつけてやっておくべきことで、そのときにやっていないのだから、今やるべきではないことが多い)

お昼は @akkikiki さんとランチ。前回来ていただいたとき はどうも3年前のようだが、今回も来日に合わせて ACL 2019 の発表の話と、アメリカでの PhD 体験や就職活動等についてお話いただいたりする。Amazon での仕事を辞めてアメリカの PhD(コロラド大)に進学することにした、というチャレンジもすごいと思うのだが、ACL 2019 で full paper が通るまでに4回リジェクトされたが諦めずに投稿を続けた、というのも精神的にすごい(普通は学生だと諦めてしまいそう)。

で、研究的には ACL 2019 の以下のお話、グラフのモジュラリティを使ってクロスリンガルな単語分散表現の評価をする、というアイデアで、シンプルな手法で良好な結果という、自分としてはかなり好きな研究である(コードもリリースされている)。自分は博士後期課程のころ自然言語処理におけるグラフを用いたアルゴリズムの研究をしていたので、なぜこれで単語分散表現が評価ができるのか(この手法で評価できる単語分散表現はどのような性質を満たしている必要があるか)、という原理の方に興味がある(いま研究室内でやっているクロスリンガルな単語分散表現は、学習の方法的にこの方法では評価ができなさそうに思っている)のだが、もしかすると今後の研究で明らかにされるのかもしれないので、楽しみにしてよう。

  • Yoshinari Fujinuma, Jordan Boyd-Graber, and Michael J. Paul. A Resource-Free Evaluation Metric for Cross-Lingual Word Embeddings based on Graph Modularity. In Proceedings of the 57th Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics (ACL) 2019.

3年前に学生たちに向けてトークしていただいたとき(リンク先)と違うのは、首都大の環境も情報通信システムコースから情報科学科になり、学生の(性)質がかなり変わったということで、研究開発に興味のある学生も増えてきた(昔はいてもせいぜい開発に興味のある学生ばかりで、あまり研究には興味のある学生は多くなかった)し、博士前期課程への進学率も向上し、博士後期課程に進学する学生もちらほらいて、GAFA みたいなところ(や海外)で働く学生がコンスタントに出てくるのも時間の問題(自分の予想だと5年以内で、たぶん現実的には3年以内)だと最近は感じている。研究にはもっとリスクを取って挑戦する必要があるのだが、最近はリスクを厭わない学生が増えてきているのがよいと思っている。