卒論を書く経験に意味がある

午前6時から2時間半ほど、メール処理したり学会の仕事をしたり。学会の仕事のように固まった時間がないとできない仕事は、どうしても週の前半にはできず、週の後半(木金土)になってしまうのだが、やりそびれると翌週の木曜日まで手がつけられないのが厄介。時間のマネジメントが難しすぎる。

午前中は論文紹介で以下の論文を紹介してもらう。NAACL 2019 の best short paper らしい。(スライド

  • Ozan Caglayan, Pranava Madhyastha, Lucia Specia, Loïc Barrault. Probing the Need for Visual Context in Multimodal Machine Translation. NAACL 2019.

画像情報を使ったマルチモーダル機械翻訳に去年から取り組んでいるのだが、ほとんどの研究は「画像情報を使っても性能は向上しない」という報告で、研究を始めたとき「効果がありそうなのに、一体どうして?」と思っていたものなのだが、そもそもよく使われている Multi30K という Flickr の画像キャプショニングの翻訳データセットが翻訳のときに画像を見ないで翻訳を作っているだとか、色々問題はありそうだと思い始めていた矢先の論文なので、興味深かった。色々擬似的なデータを作成したりして比較検討していて、最初のほうはなるほどと思う一方、途中から実験結果の見せ方があやしく(BLEU が低い結果は見せない等)、書き方がとてもうまい論文であるという感想。

午後は機械翻訳グループの進捗報告3時間。いまは機械翻訳が研究室での最大グループなのだが、この3月で2人抜けたので、新しい展開になるのかなと思っている。

夕方は情報科学科の新任教員歓迎会。新しく助教になった方を歓迎する会なのだが、自分は博士論文の審査委員も務めたので感慨深いものがある。NAIST 松本先生が、学生のことを見る目があるな(明らかにできる学生は誰が見ても分かるが、明らかではない学生でもあとで目が出る学生のことはしっかり育てている)とずっと思っていて、どうやったらあんなに見通せるようになるのだろうか?と不思議に感じていたが、こういう学生は将来こうなる、という事例がたくさん蓄積されていて、そこから逆算してこういう学生はじっくり(気長に)育てよう、という気持ちになれるのかなと思ったりする。最近、学部生と修士の学生についてはそういう経験が蓄積されてきたのだが、博士の学生については全然知見が足りていない。

ちなみに、今年外部からの博士前期課程の受験生は全員ストレートで(?)来る人で、社会人経験者はゼロ(ここ数年は、基本的に社会人経験者しか受け入れていなかった方針を転換した)なのだが、松本先生が定年で学生を取れなくなったので、これまでなら NAISTをお勧めしていた学生たちを今年からうちで引き受けることにしたため、うちの研究室もここ(来年度)から第2章という感じである。これまでうちの研究室を見学してから NAIST 松本研に行った学生は、半数以上は2年間でトップカンファレンスに通しているし、そういう人がうちに来てくれるなら今以上のことができるかもしれないし。ただ、うちは(年10人以上受け入られる松本研と違い)受け入れられて年3人だし、丁寧に面倒を見てくれる助教・准教授が教授の下にいるわけでもないので、基本的には入学前から自然言語処理に関することを卒論・卒研等でやってもらってからうちに来ることをお願いしている(博士後期課程に進学することを前提としない場合、こうするのがお互いベストであるという結論に達した)。