大学を飛び出てみると見えてくる

色々あって参加できるかどうかが直前まで分からず、申し込みだけしていたのだが、紆余曲折あって参加できるのことになったので、急遽 ステアラボ人工知能シンポジウム に参加してみる。Acadexit と呼ばれる、大学や国の研究所を離れて民間企業に転じたり、起業したりするという流れがここ数年で加速していて、このビッグウェーブに乗るしか!と思って聞きたかった、というのは大嘘で、昔からよく知る人たちがこういうテーマで経験を共有してくれるというので、ぜひとも聞きに行きたかったのである(ちなみに、最近研究に関するイベントにはほとんど行っていない)。仲間が話すときには聴きにいくもんだという、科学史・科学哲学時代の野矢先生の話も座右の銘にしている。

3人のお話はどれも示唆に富むもので、上記リンク先のページには資料が全て公開されているので見ていただけるといいかと思うのだが、要点をまとめると、

  • 大学には大学のよさが、企業には企業のよさが、研究所には研究所のよさがある
  • どの立場であれ、やること(研究に関する仕事)の大部分は共通している
  • 大学でこれは悪いと思うのは、紙の書類仕事やサーバ管理などの雑用、若手をパーマネントで雇えない状況(フルタイムで雇うことは予算があればできるが、パーマネントでないと長期的に考えることができない)。
  • 大学以外が明らかにいいわけではないが、大学の悪いところは明らかに悪いので、活躍の場所を広げることで、外から「揺さぶり」をかけたい

個人的には @sesejun さんの話が示唆的で、お茶大~東工大時代の学生とポスドク数の推移 と獲得研究費のグラフを見せた上で、テニュアトラックで雇えないと腰を据えて研究できない、というところから起業に至る、という話、そして情報系はいま企業が研究機能を内部に持っているが、業績が悪化すると恐らくデータだけ残して研究機能は切り捨てるだろう(バイオ系はそうしてきた)、という予想の2点とも、言われてみれば納得なのだが、軽くショックであった。

自分も、いまの状況がずっと続くわけではないから、将来に備えてどうなっても大丈夫なようにした方がいいと思っているが(自分自身もそうだし、学生たちもそう)、では具体的に将来どのようになりそうかということは想像がついていなかったのである。一応、前者の話も後者の話も、(うちの研究室は)こうすればいいんじゃないかという腹案は考えているのだが、毎年「これでいいのだろうか」と少しずつアップデートしているので、どちらももっと真剣に考えた方がよさそうである。

他にも久しぶりの人にもたくさん会えたし、個人的にはとてもよいイベントであった。