留年をしたから見えることもある

午前中は国際副専攻の入学前ガイダンス。「国際副専攻」というのは、半期以上の留学をして所定の単位を収めることで、主専攻の修了時に副専攻の修了証がもらえるという制度であり、システムデザイン学部情報科学科も今年度からスタートしたのである(システムデザイン学部で参加しているのは情報科学科だけ)。

この制度、留学に伴って留年することになってもその分の授業料は免除してもらえたりだとか、国際副専攻の学生しか履修できない英語等に関する特訓の授業を受けられるだとか、いくつかメリットがあるのだが、最大のメリット(かつデメリット)は「グローバル人材育成入試」という AO 入試と紐付いていることである。情報科学科が第一志望の人にとっては、小論文・面接に加えてセンター試験を受験する必要はあるが、受験のチャンスが1回増える。一般推薦は数理的思考力を見るのに対し、グローバル人材は英語を含めた言語能力を見るのだが、上記のように入学してからのメリットがあるので、英語が苦ではない人は挑戦する価値がある(英検準一級で受験資格があるが、これはそんなにハードルは高くなく、たとえば東大に合格する人は英検準一級は受けたら受かるレベルの試験かと)。

それはさておき、今回は人文社会学部の学生とシステムデザイン学部の学生でグローバル人材育成入試で入ってきた学生のガイダンスで、担当委員から一言ということで、自分がシドニー大学に交換留学していたときの話や、3年間留年した話、人文系から理転した話をしたりする。人文社会学部の学生たちの方が、ジャーナリスト志望だとか、哲学やりたいとかで、むしろ自分が20歳のころは「そっち側」の人間であり、システムデザイン学部の学生たちの方が遠かった気もするが……。

今年度から情報科学科になり、来年度からこの制度で毎年数名英語ができて留学する学生が入ってくるので、よい刺激になってくれることを期待している(海外に研究インターンシップに行くのも、自分が行ったときは珍しい方だったが、今では当たり前のようにみんな行くようになった)。あと、今後はプログラミングが抜群にできる学生たちにも本学科に入ってきてほしいと思っている(この点、農工大等同ランクの他大学に、大きく差がついている気がする)ので、さらに色々と仕掛けていきたい。

お昼は日野キャンパスに移動して、@moguranosenshi くんを囲んでランチ。阪大での教員生活について聞いたりする。自分自身、NAIST の助教時代は(博士後期課程時代と異なり)結構精神的には大変だったので、分かりみが深い。(学生時代とは違うテーマを開拓して)ファーストで論文を書くストレス、(自分の学生時代とオーバーラップしている)学生指導のジレンマ、(出しても出しても通らない)研究費獲得のプレッシャー、(他の仕事やプライベートとの両立)等々……(カッコ内は自分のときの話で、彼の話とは関係ないが)。

とはいえ、自分にとってのターニングポイントは助教2年目(1年と少し)のときに IJCNLP という国際会議にフルペーパーを5本投稿して全部通ったことで、これで自信をつけ、教員としてやっていけそう、と思ったものである。実際、NAIST 助教時代は投稿した論文はほぼ全て採択されていたので、優秀な学生に恵まれていたし、研究に集中できる素晴らしい環境だったな、と改めて思う。

午後は進捗報告を聞いたり研究相談に乗ったり。論文誌の査読コメントへの対応を議論したり、国際会議に投稿する論文の実験結果を議論したり、はたまた研究テーマについてブレインストーミングしたり、色んなステージの相談があって、おもしろかった。一人で研究していると、なかなかこういう風にはいかないので、やっぱり自分は今のような環境がいいなあ。