メンターがいるかどうかで大違い

午前中は古典の論文紹介で以下を紹介してもらう。

  • Daniel Dahlmeier and Hwee Tou Ng. Better Evaluation for Grammatical Error Correction. NAACL 2012.

short paper なのであまり読むべきところはないのだが、英語の文法誤り訂正で広く使われているという意味では古典である。動的計画法の復習ができたので、新入生向けにはよかったのではないかと思うのだが、GLEU のような人手の評価に近い自動評価尺度や、そもそもリファレンスを用いない評価手法も登場しているいま、これが "Better Evaluation" かと言われると微妙なものがある(当時使われていた評価尺度が、もっと悪かった、というせいだけど)。

この論文、自分も昔紹介したことがあるのでその日の日記を探してみたら、機械翻訳に関する記述があって趣深い。当時はニューラル機械翻訳がなかったので、いまと全然違うわけで、学ぶことが多すぎて2年間(実質1年間)では手に負えない、ということは特になくなったが、逆に1年間でも世界中の人が研究できるようになってしまい、決められた時間の中で一番早く結果が出せる人だけしか研究成果として認められない(winner-take-all)ので、実装力・数学力・英語力のどれかがない人は別の意味で研究ができない時代になってしまった。以前は手の遅い人(あるいは論文を読んだりアルゴリズムを理解したりする速度が遅い人)でも時間をかければなんとかなっていたので、この世界のほうが前よりいいとは手放しには言えない。結局、以前の世界でもメンターが必要だったような人は、今の世界でもメンター相当の人がいないと厳しいことは変わりがないように思っている。

お昼は実験室の利用に関する打ち合わせ。正直なところ、ちゃんとネットワーク環境さえ整えてくれれば、情報系の実習は Google Colab とかなんだとか、クラウドベースでいいんじゃないかと思っているのだが、首都大はネットワーク環境がありえないほど使いにくいので、ある程度調整しないといけない。みんな口々に言っているのだが、とにかく Eduroam に入ってほしいし、研究室でも学内の Wifi につながるようにしてほしい(そうすれば、少なくともうちの研究室で Wifi は用意しない)し、いやいろいろありすぎてもうなんとも……。

午後は研究室で新入生の自己紹介。最近は博士後期課程への進学希望者と社会人しか受け入れていないのだが、社会人の人は(工学的な興味にせよ、理学的な興味にせよ)モチベーションがはっきりしているので、話を聞いていてもおもしろい。最近受験希望の問い合わせが多過ぎて(上記の条件をウェブサイトに書いているのに、もう40件は問い合わせがあり、20件は見学を断っていて)、しんどくなってきているので……。