新しくスクラッチから立ち上げる

情報処理学会第227回自然言語処理研究会(NL研)のため、岡山県立大学へ。当初は発表件数が多くて前日入り必至のようなプログラムだったのだが、何件かキャンセルがあり、そこそこ余裕を持って出られる午後スタートになって助かった。洗濯したり干したりゴミ出ししたり、夫婦で30分くらい話したりする余裕もあったり。

今回、実はもともと岡山県立大の磯崎さんから7月の NL 研はどこで開催するのですか、と問い合わせがあったので、それならぜひお願いできますか、と逆オファーしてここになったという経緯。岡山県立大は磯崎さん菊井さんが新しくそれぞれ自然言語処理の研究室を立ち上げられ、にわかに自然言語処理の研究が盛んになっている大学の一つである。

品川経由で岡山に行くが、どうやら飛行機で行くのが最速っぽい。まあ、新幹線の中でも作業できるので、体力が削られることを除けば、そんなに居心地が悪いわけではない。ギックリ腰になって2週間近く身動きが取れない体験をしてからは、2時間以上新幹線に乗るときは差額を自腹で払ってグリーン車に乗っている(出張のあとマッサージに行ったりする時間とお金、そしてもしギックリ腰になってしまったときのことを考えると、その方が安い)。

岡山県立大は岡山からそこそこ距離があるようだが、岡山駅NAIST の [twitter:@akivajp] くんと会い、一緒に迎う。2人で電車を待っていたのになぜか乗り逃すという失態があったが、なんとか研究会の開始には間に合う。

NL研は一昨年から動画配信をしているのだが、今週末はたまたま情報処理学会の4研究会(SIGSLP, SIGAAC, SIGMUS, SIGNL)が同時に研究会を開催し、研究会の公式のニコニコ生放送のチャンネルが複数研究会の同時配信に対応していないので、NL 研は昔使っていた Ustream のチャンネルを復活させることに。

配信は簡単かと思ったが、ネットワーク接続が不安定で難航する。最終的には有線 LAN でつながせてもらって安定するようになったが、いつものように iPhoneテザリングでは対応できなかったのが意外だった。

夜は懇親会。[twitter:@kiyukuta] くんから、以前三浦海岸で開催された NLP 若手の会シンポジウムで彼の発表に「深層学習をいま始めるとしたら、何周遅れですか」と質問したのをよく覚えていたようで、そのとき「何周も遅れている」と答えて、やる気のある学生の心をくじいてしまったら申し訳ない、とのことだったが、むしろそのときに話を聞いた学生たちが現在うちの研究室で深層学習をやっている人たちなので、周回遅れと聞いたほうが燃えるのかもしれない(笑)自分がよく覚えているのはもう一つの質問のほうで、いまから参入するならどういうテーマがいいですか、と質問して、再帰的なニューラルネットワークのほうでしょうか、と答えてもらったことである(うちの研究室でも、深層学習をしている学生のうち半数は再帰的な構造のニューラルネットワークを使っている)。

あと [twitter:@neubig] さんと、日本を離れる前に他愛ない話ができてよかった(なかなか、こうやってご飯を食べたりする時間がなかった)。

大学を移るとき、一緒に研究している学生とどういう距離感でいるのがいいのか、というのは難しい問題だが、一人でもついてきてくれるならついてきてもらったほうがいい、というのは確実である。0を1にするのと1を2にするのは全然難易度が違って、自分は首都大に一人で来たので研究が2年はストップしたと思う。ただ、それは悪いことばかりではなくいい面もあって、そこで全部リセットされたため、いまの研究室の中心メンバー(M2)は深層学習に挑戦する学生がたくさん出てきてくれたし、NAIST の研究を引き継いで続けていたら、いまも深層学習は手を出していなかっただろう。

自分は NAIST助教になったときも、研究室を変わっておらず、新しい研究テーマに手を出すのに結局2年間くらいかかったが、体感的にはそれまでの研究を全部捨てて全く新しい研究テーマにチャレンジすると、1年半〜2年でなんらかの成果が出始めて、3年くらいすると一通り手を出せる、という感じで、深層学習の勉強を始めたのも2014年10月からだから(首都大に来たのは2013年4月で、最初の2年はひたすら授業、授業だった)、ちょうどいまが1年半〜2年くらい経ったころで、少しずつ芽が出るかな? と思っているところである。

いまの環境は自分にとても合っていると思うし、まだまだ学ぶべきことがあると思っているが(大学の仕事にしても、重要な仕事としてまだ学部入試と学部教務をやっていない)、もう一度自分で手を動かすような研究・開発の世界に身を置きたいなぁ、と思ったりすることはある(子育て中は難しいだろうけど、逆に、子どもが小学校に入るまでだよ、とアドバイスくださる方もいる)。