転んでもただでは起きず再利用

人工知能学会のセミナーのために慶応大学日吉キャンパスへ。人工知能学会の編集委員を2年2期の合計4年間勤めていたのだが、精力的に(?)活動していたのは奈良にいた最初の1年だけで、東京に来てからは、編集委員会への参加も(奈良にいたときはわざわざ上京していたのに)ウェブ参加したり、そもそも自分の関係する案件がないときは参加しなかったりと、あまり熱心な編集委員とはいえなかった。(学会誌の表紙の件以降、編集委員会から足が遠のいた)

ただ、人工知能学会の編集委員は、国内のどの学会の委員をするより勉強になったし、とても楽しいものでもあり、自分に余裕があればもっと続けてもいいかと思ったし、任期を終えるに当たって少しお仕事をしてほしい、という話があったので、今回お引き受けした次第である(ギリギリ6月までが任期)。まあ、まだ査読担当中の論文があるので、もう少し仕事は残っているのだが……。

慶応大学日吉キャンパスに来るのはだいぶ久しぶり。もし慶応の文学部に進学していたら、1年間は自宅からここに通っていたと思うのだが、1時間半かかるのはけっこうしんどい。毎日ではないからいいけど。

トークの資料を準備する時間が取れず、資料をお渡ししてからトークまでにさらにいろいろ変えた最終版のスライド。他の仕事もある中これを作るのは大変であったが、研究室内でもこれを使って深層学習の説明を(見学者を含めて)したし、後期の研究室見学でもこれを使って説明できるし、オートマトンと言語理論・情報理論自然言語処理という今学期の授業の全てでこの話をしたので、まあ十分元は取れていると思う(逆に言うと、そういう再利用ができそうにない話だったら、単に自分の負担が増えるだけなので、お断りしただろうけど)。

アンケートの結果を見ると、分かりやすかったという声もある反面、もっと高度な内容を期待していた、というフィードバックもある。もっと高度な内容を期待される方は、このようなセミナーよりもっとふさわしいところがあるような……。

[twitter:@chokkanorg] さんの 深層ニューラルネットワークによる知識の自動獲得・推論 もかなりの労作で、こちらは高度な話がたくさん入っていて、自分も勉強になる。結局自然言語処理でうまくいっているように見えるのはパターン認識タスクで、推論が必要なタスクはまだまだ難しいのだが、どうやったら推論がうまくいくのだろうか、ということを最近考える。結局ロジック的の演算的なものが必要だとは思うが、仮説の探索空間が膨大だという話は割とニューラルネットワークでうまくいくという話と接合しやすい気がしていて、機械学習でいう正則化のようなことが推論でもできれば突破口になるのかも、とぼんやり考えたりする。

個人的には [twitter:@napman1] さんの深層学習入門的な話がとても参考になって、時々東大松尾研でのベストプラクティス的な話が聞けたのは大きな収穫だった。GPU の数は夏にはうちの研究室とほぼ同等になるのだが(もっとたくさん持っているのかと思っていた)、実験で環境を壊してもいいように仮想化してあって、200台くらいの仮想マシンで使っている、というのは目から鱗だった。Docker とか使っている人には当たり前なのかもしれないが、MS の Azure で GPU インスタンスが使えるようにならないかな〜(今年度後半に登場?)、なんて思っていただけで、自分で仮想環境を作る、という発想がなかったのである。

とりあえずうちの研究室はしばらく深層学習をツールとして使う学生がいると思うので、アクティブに研究ができるうちにいろいろ試してみたい。