NLP2016 ワークショップ: バランスを取るのは家族全員で

午前中は大学院教務委員会。今年度はこれで終わりなのだが、来年度は大学院教務委員長を拝命しているので、責任重大(おいそれと休めない)。大学教員になるまでは、こういう「なんとか長」は偉い人がする仕事かと思っていたのだが、なんのことはない、持ち回りでやらないといけない仕事であって、「なんとか長」になって嬉しい人など(たぶん)いない、というものである(PTAの役員決めも誰もやりたがらないが、ずっとやっていないとどこかでやらないといけない雰囲気なので、どこかで観念してやる、みたいなのと同じ)。

お昼に Skype の接続テスト。Google Hangout の方が安定している印象だが、操作を失敗するとどうやれば復帰できるかよく分からないので、使い慣れている Skype で。

昼過ぎは国際会議の原稿のチェック。本当は昨日で終わっているはずだったのだが、重大な問題が発見されたので、本文全体をそれに合わせて直す、という作業。これ、気が付かないまま世に出たらえらいことだったので、世に出る前に気が付いてよかった。カメラレディの〆切に間に合いそうにないので、少し延ばしてもらえませんか、とメールしたところ、問い合わせが多かったのか、カメラレディの〆切が全員1週間延びた(汗)余裕を持って直せるようになったのはいいのだが、元々の〆切で準備していた人は浮かばれないような……(我々は、延ばしてもらえないなら発表を取り下げないとダメか、というくらい致命的な問題だったので、助かったが)

午後は言語処理学会年次大会のワークショップ。「論文に書かない(書けない)自然言語処理」というお題で、ワークライフバランスについて何か話してほしい、と [twitter:@hitoshi_ni] さんから打診があったので、諸般の事情を考慮した結果、発表資料なしでお引き受けしたのである。(資料を作ると参考になるだろう、と思いつつ、それをしているだけの時間が捻出できない、という葛藤)

基本的には与太話だったと思うが、参考になった、と言う人が想像以上にいたので、やってよかった(参考にならなかった、と言う人は、特にフィードバックをしないだろうが)。質疑応答がうまく答えられなかったのが心残りである。声が聞こえないという不具合はなかったのだが、その場にいないと突然質問を振られる感がある。

先人の体験談をいろいろ聞く、というのが割と勉強になって、一個一個は個別の事例で一般化はできないのだが、こういうふうにしている人もいるよ、という事例を知るだけで、もやもやが晴れたり、これは八方塞がりなんじゃないかと思っていたら、考えもしない解決策があったり、ということがよくあるので、いろいろ見聞きするといいと思う。特に研究者は他の職業の人の話が参考にならないことが多く、同じ境遇である可能性が高い人の話を聞くといいのではなかろうか?(いまは Twitter とか Facebook があって便利な時代になった)

結局ワークライフバランス的には共働きかどうか、というのがポイントなのだが、男女ともに働くなら、お互い働く時間、そして育児と家事をする時間、を等分にする(少なくとも、近付ける)、というのが重要だと思っている。単純に世帯の収入の(その時点での)最大化を目的関数にしてしまうと、勢い片側(大抵男性)が相対的に長時間勤務をすることが正当化され、それを続けることによって埋めがたいキャリアの差になってしまったりするのが問題で、少なくとも短期的な収入のみの最大化を目的関数にすべきではない。長期的な(リスクも考慮した、期待値としての)収入の最大化をすると、多分男女同じくらい仕事をすることにつながるのではないかと思うが、そもそも経済的価値に落とし込むと、社会的になぜか男女で同じ仕事でも収入が違うことがあったりするので、時間単位で平準化するのがもっとも公平ではないか、と思うのだ。

そこで提案したいのは、夫婦で家事・育児の時間を均等にする、という制約をつけた上で、夫婦の仕事時間の総和を最大化する、というものである。特に共働きでなければならない、というものではないのだが、家事・育児を男女ともに同じ時間やる、という制約によって、片方に負荷が集中する、という状況を避けることができる。結局「女性研究者は博士号取得直後の時期に出産・育児が重なって、任期付きが増えてきた研究職は厳しい」というような言説も、育児の負担は主に女性がやる前提で話しているので、男女ともにやる社会にしてはどうか、と思っている。(ただ、安定するまで子どもは、と思うと、自分たちのように30代後半になってしまいそう)

夕方は人工知能学会の編集委員会。こちらもウェブ参加(Google Hangout)。人工知能学会はおもしろい人が多いし、小さい tips がとても役に立つ(なんか、そういうのに詳しい人が多い……)ので、可能な限り参加したいなと思ったのであった。