修論の目次を見るとよく分かる

午前中、機械翻訳勉強会の進捗報告。2人の予定が1人だったが、1人で1時間かかったので、ちょうどよかった。

研究室に来てから1年半もすれば、自力で論文をサーベイし、ビックアップした論文を正確に理解していくつか実装できるようになっているのだが、普通に研究すればそれなりの力が付いているということは、やはり内部進学の学生であれば修士論文では相当のことができるのではなかろうか、という気がしている。M1 のうちに国際会議に通せれば学振 DC1 もかなり取りやすいと思われ、研究をする前に就活が始まるので進学するかどうか迷う、というようなことも防げるし。

ただ、外部から進学してきて修士で出てしまうと、せっかく自然言語処理の研究ができるようになったのに、そこで終わってしまうのがちょっともったいない。本人のキャリアもあるし、進学を特に勧めているわけではないのだが、外部から修士に来る人は(3人に1人くらいは)博士まで進学してくれるといいのになぁ、と思ったりする。ちなみに首都大は学振 DC1 に落ちても博士後期課程に進学した学生は(選考はあるが、今のところ倍率は高くなく)月15万円もらえるという特別な奨学金があるので、修士課程から来て博士課程に進学する可能性のある人には割といい環境である。

お昼に1件だけ修士論文の目次発表。来週には修士論文のタイトルと副査を決めないといけないので、どういう章立てで何をどれくらい書くか、ということをチェックするのである。だいたい目次を見るだけでもどこに問題がありそうか分かるので、これが注意喚起になるのである。ちなみに、クリスマス周辺で修論概要を副査の先生にチェックしていただき、年明け1/5には修士論文の審査願を出すので、研究室内では12/22を修士論文第1稿の〆切としている。基本的に対外発表で一度原稿の添削はしているので、自分がどれくらいのペースで論文を書けるかは分かっているだろうし、時間のかかる人は早めに着手してほしい、と思っている。

午後は論文紹介。以下の論文を紹介してもらう。

  • Tang et al. Building Large-Scale Twitter-Specific Sentiment Lexicon : A Representation Learning Approach. COLING 2014.

“representation learning” と書いてあるように、感情表現辞書を構築するために表現学習する、という話である。いろいろ詳細が不明なところはあるのだが、2014年の論文であることを考えると、割と悪くない話である。しかし深層学習関係はちゃんと勉強していないと論文紹介も厳しく(査読も難しいため、国際会議の査読でも明らかに誤読している査読を目にすることもある)、なんとも言えない感はある。

うちの研究室は深層学習を研究テーマとする学生が多いので、ちゃんと進捗報告や論文紹介を聞いていれば基礎知識は身につくと思うのだが、深層学習勉強会に出ていない人にまでそれを要求するのは酷であるとは思いつつ、昨今の深層学習ブームを考えると深層学習のことを無視することもできないので、悩ましい。もちろん、アノテーションや辞書作成など、完全に深層学習とは無縁の研究をする場合は、深層学習を知る必要もないと思うのだが、少しでも機械学習成分が入ってくると、深層学習の手法はどうか(試すべき)、という話になるのである。これ自身は SVM や CRF も通ってきた道だと思うし、別に深層学習が特別というわけではないが……。

夕方は修士論文の目次発表(続き)である。M1のときからずっと同じ研究テーマを継続している人が1人、M1のときの研究テーマと類似の研究テーマで継続している人が1人、M1のときからM2の夏までに一度研究テーマを変えたが、M2で取り組んでいた研究の実装が完成しないのでまたM1のときのテーマに戻した人が3人、という塩梅である。

研究テーマを変えること自体は、研究の幅も広がるので悪いことばかりではないし、投機的に新しいテーマをやる方がおもしろい研究が発見できるかもしれないので、歓迎なのだが、実装が完成しないことに関しては、自らの能力と実装の難易度のマッチングがよくなかった可能性もあるが、どうも就職活動に長期間時間を取られたかどうか、がキーファクターであるような気がする。今年は就職活動の時期が大幅に後ろ倒しになる、というかなりイレギュラーな年ではあったのだが、それによって(経団連の参加にないウェブ企業に就職希望の人は、例年通り M1 から就職活動を始めて、あっさり M1 のうちに内定をもらっていたのだが、それ以外の企業を考えていた人は)研究時間が明らかに影響を受けたので、今年の M2 の学生は運が悪かったように思う。

来年はまた揺り戻しがあるようだが、どうなってしまうのだろうか……。(内部進学の学生は M1 のうちに採用活動が終わるくらいでちょうどよいと思うのだが、外部進学の学生は M1 だと研究がスタートしていない学生も多いので、これで就職活動されても困る、という)