やりたいことはこの夏実行に移そう

午前4時から原稿のチェックをしたり試験問題の最終確認をしたり。前日までに試験問題を印刷できていればいいのだが、いつもギリギリまでやらないので、大学に行ってコピー機が壊れていたらどうしよう、とかしょうもないことを考えたりする(授業用に使える教員共通のコピー機は1台しかないので、壊れていたら自分のプリンタで印刷しないといけないが、こちらは大量印刷に耐えない)。

午前中は機械翻訳の勉強会で、フレーズベースのデコーダについてと、原言語の並べ替えによる翻訳手法について。フレーズベースの統計的機械翻訳は、語順の入れ替えを除けばかなりかな漢字変換と共通している(かな漢字変換のほうが、並べ替えのない、かな文字列からかな漢字混じり文字列への翻訳と考えてもよい、)ので、機械翻訳を研究テーマにしない人でも、自然言語処理を勉強している人であれば、一通り押さえておくとよいと思う。けっこういろんなタスクで、統計的機械翻訳の手法や考え方を応用することができるのである。

進捗報告を聞いてみると、学期末でいろいろやることがあってあまり進んでいないとのこと。夏休み前は勉強会がある以上仕方ないので、やっぱり勉強会の(少)ないとき(8-9月、12月以降)にがっつり研究を進めてほしい。夏休み前の勉強と研究のバランスは悩ましいところで、10月以降は年度内の研究テーマは変えないほうがよいが、9月まではいろいろ考えて手を出してもいいんじゃないかな、と思う。

大事なのは手を動かして「あ、やっぱやめよう」と思うところまでやる(失敗もする)ことで、やらずに引き延ばして後期まで(精神的にも)引きずると、限られた時間で悶々とするし、結局成長の機会も失う可能性があるので、避けたいところである。

オートマトンと言語理論の試験は問題なく終了。早く終わって出ていく学生もいるかと思ったのだが、8割程度の学生は時間いっぱいまで使っていた(平均点は8割程度だったので、狙い通りそんなに難しいものではなかったはずだが)。

試験の前に5日連続の3Dプリンタの演習をインダストリアルアートコースで企画しているので参加者を募ったところ、2人応募してくれた。こういう新しい技術は若い人ほどすぐ吸収できるので、もっと挑戦してくれるといいなと思う。情報通信コースの人より、インダストリアルアートコースの人のほうが、プログラミングに関して積極的であるように感じるのだが、隣の芝は青く見えているのか、あるいは実際何かを作ろうという人がアートコースに多いのか(たとえばゲームプログラミングの授業は情報通信コースにはなく、アートコースにある)、どっちなんだろう。

情報系の学部・学科・コースを志望する高校生・浪人生・学部生などには、情報科学にするか、他の分野にするか。ということを一度考えてもらうとよいと思う。特に

高校生からよく聞かれる質問の一つに、

「映画・音楽・ゲームなどのエンタテインメント産業に就職できますか?」

という質問があります。

これらの企業の中には、作品自体を制作するアーティストやプロデューサなどの職種と、制作の土台を支える技術をつくる職種があります。本学情報科学科からエンタテインメント産業に就職した卒業生は少数ながらいます。基本的には後者の職種(技術職)が前提であることを理解して下さい。アーティストやプロデューサになりたいのなら他大学を探したほうがいいです。

というのはうちの情報通信コースも同じで(というか情報科学情報工学系の学部・学科・コースはどこも同じだと思うが)、1年生に聞くと少なからず「ゲームが好きで来ました」という人がいるのだが、ゲーム自体を作りたいなら本学の情報通信コース以外を探したほうがいい(たとえば、うちのシステムデザイン学部のインダストリアルアートコースのように、作品を作ること自体を学べるところとか)。もちろん、きっかけはゲームで入ってきて、情報科学の楽しさに気がついて人工知能の研究をする人もいるだろうし、興味を持ってくれるのはありがたいのだが……。

あと、ゲーム業界に就職したいなら授業で勉強なんてしてないで、今すぐ作ればいいと思う。ゲームに限らずなにかをプロデュースしたい人というのは、黙っていてもやりたくてやってしまう人だろうし(自分がこの日記を延々書いているように……)、一度もやったことがないのでやれないが、後押しされればハマるという人もいるだろうが、Unity とか使えば簡単にゲームが作れる時代に作らないってのは、そんなに作りたいと思っていないのかもな、と思ったりもする。

試験のあと、9月の1-3日の情報処理学会自然言語処理研究会(NL研)の会場の本予約。今学期8回授業をしてみて、エアコンが効きにくい古い教室から、全館ばっちり冷房の入る新しい建物に変更してもらった。南大沢で学会・研究会をホストするのは初めてで、どうなることか分からないが、せっかく(秋葉原キャンパスではなく、南大沢キャンパスに)お越しいただくので、ストレスのないようにしたいものである。(最寄り駅から歩いて20分強かかる日野キャンパスより、駅出て目の前にある南大沢キャンパスは、遥かに便利であるが)