10年あとも続く研究テーマを考える

今日も午前中は IBISML チュートリアル。ちなみに IBISML チュートリアル・IBIS 2013 ワークショップについては [twitter:@shima__shima] さんのIBIS2013メモがとても詳しいので、詳細はそちらを参照されたい。

チュートリアルの2日目は鹿島さんによるクラウドソーシングの話で、他のチュートリアルと違い、教科書に載っていないような内容で、大変楽しめた。ただ、やっぱりモデルをがんばって得られるゲインより、タスクの発注の仕方や implicit な教師情報の獲得方法を工夫した方が効果が高いように見える(これはクラウドソーシングに限らず、どんな手法でも似たようなものだと思うが)。

このあたりは昨年人工知能学会論文賞を受賞した以下の論文が、サーベイ部分も充実していてよいと思う。松本先生がしきりに「EMでよくなるのは興味深いが、いったいどれくらいよくなるのか」と質問されていたが、恐らくこの論文を読めば答えが書かれていると思われる。

お昼は[twitter:@uchumik] さんとその同僚の方とキングコング というお店で食べる。大学の研究室の立ち上げの話に絡めて、どのように機械学習自然言語処理を勉強したか、というようなお話を伺う。@uchumik さん曰く、学部で自然言語処理の研究室に配属になって実装で困ったことはなかったが、それは高専で行列の固有値を求めるプログラムやニュートン法を実装するプログラムなどさんざん書いたからかも、というお話で、これは非高専の首都大生が真似するのは無理だなと思った……。

そういえば、これは日曜日の話だが、[twitter:@sleepy_yoshi] さんから同僚で入社してから自然言語処理を始めた方を紹介していただき、これ幸いと、どのように勉強されたのか質問してみた。こちらの方は@uchumikさんとは違うバックグラウンドだと思うが、自然言語処理は資料が公開されていることが多いので、自分で検索して自習されたとのことである。

また、プログラミングで分からないことがあったらすぐ近くに複数人聞ける人がいるのがありがたいそうで、同じ人に何度も質問するのは気が引けるが、それぞれ得意分野が異なる先輩研究員がたくさんいらっしゃるので、困ったらすぐ解決してもらえるそうだ。最近、質問できる環境でも質問しないで延々考えて進まない人をよく見かけるが、このように素直に質問できるというのは一つの才能なのではないかと思う(自分が3月に実施したセミナーを受講されていて、彼女はセミナー中もセミナー後もとても熱心に質問されていたのを思い出した)。

午後は IBIS 2013 の「ビッグデータ時代の機械学習」セッション。みなさんスピーカーは「ビッグデータ」ブームの前から機械学習に従事されている方々なので、名前こそ「ビッグデータ」とついているが、このブームが長く続くとはみなさん思ってらっしゃらないようで、一安心。

パネルディスカッションでは司会をされていた東工大の杉山さんと、それに答える先生方、という感じだったが、トップカンファレンスに論文をばんばん通して研究費もがっぽり獲得して日本の研究を率いていきたいという杉山さんと、それってどうなのという先生方とのやり合いで、どちらも一理あって丁々発止、おもしろかった。情報系は確かにお金をたくさん使う分野ではないし、トップカンファレンスに論文を通すことが優れた研究をしているというわけでもないというのはその通りだと思う一方、若手がそう言ってしまうのは負け犬の遠吠えのように聞こえてしまうような気がして、勇気が要る(大御所の先生方が言っていても、新進気鋭の若手の人の中には納得が行かない人もいるかもしれない)。

自分も今後どういうふうに生きていこうかなぁ、と思うのだが、この半年は新しい環境に慣れるのに精一杯で、どういう研究をしようかということを忘れていたので、自分自身の足下を見直すいいきっかけになった。任期付きとはいえとりあえず10年間くらいは次のポストを気にせず大学にいられる身分ではあるし、10年間成果が出なくても取り組みたいような基礎的な研究テーマを、2年間くらいかけて探してもいいのかなと思う。

テクニカルな議論が研究的には一番役に立つのだが、こういう大きな方向性をざっくばらんに(放言気味に)話し合うようなセッションがあるのはよいことだと思った。