東大に行っても就職できるとは限らない時代

やはりどのように過ごしても週8〜10時間くらいはメール処理に取られているのだが、どの時間をこれに当てるのが最適なのかをそろそろ考えたほうがいいかもしれない。いずれにせよやらないといけないことなので、1日の中でもっとも生産性の低い時間を割くとよさそうなのだが、いったいどこがそれに当たるのだろうか。(いまのところ、毎日記録しているのは時間と内容だけなので、質に関してはログを取っていない)

午前中はB3/M1それぞれのプロジェクト実習系の連絡ページや Wiki、タスク管理システムの設置。サイボウズでいいんじゃないかと一瞬思ったが、やはり Wiki がほしいしバグ管理システム的なものもほしいしな〜(3カ月くらいしか使わないにしても、書いておかないと忘れてしまう)。

昼から人工知能学会の編集委員会。久しぶりかもしれない。奈良にいるときは東京に出てくるきっかけとしてよく活用していたのだが、東京にいるとそういう動機がなく、かつ授業の準備が毎週あるとなかなか行きにくいのである。今回は、まだ授業が始まったばかりの週なので参加できたが、来月はダメかなぁ。12月以降は授業がなくなるので、また参加できるかもしれないが……。

夜は文III16組(フランス語選択)の同窓会。東大の文IIIというのは、文学部と教育学部に進学する人が1-2年生のとき教養学部で所属する科類のことである(ちなみに文Iが法学部、文IIが経済学部)。クラスメートのうち2人が今年司法試験に合格したので、そのお祝いである。めでたい。2人ともロースクールに通っていたらしいが、34-5歳になってさらにここから司法修習生もしないといけないことを考えると、40歳の手前でようやく新しい仕事に就く、というのはなかなか大変な道程である。

とはいえ、弁護士以外も公認会計士や医師など、国家資格による独占業務となっている仕事に就いている人が多い。逆に言うと、文学部や教育学部に進学すると、ほとんど就職先がない、ということであろう。自分自身、大学に入学するときは「どうせ仕事はそのうちしないといけないのだから、大学にいるときくらい、世の中でもっとも役に立たない学問をしよう」と思って哲学を志し、文IIIに来たので後悔はしていないのだが、いま大学受験を考えている高校生や浪人生は、ちょっとだけ真剣にこのことを検討したほうがいいように思う。

「東大だったらさすがに文学部でも就職あるんじゃないか」と思うかもしれないが、現実はそんなことはなく、卒業してから資格学校に入り直したり医学部に編入したり、あるいは自分のように大学院は全然違う専門に進んだりしないと「高学歴ニート」まっしぐらなのである。これだけ強調しても「それでも腐っても東大でしょう、就職先にこだわらなければありますよね」とか言う人がいるかもしれないが、恐らく就職先にこだわらない人はそもそも学部で学ぶ内容にもこだわらないので、そもそも文学部には来ていないと思う。

それに関係して、最近読んだ「笑うに笑えない大学の惨状」は(タイトルはさておき)そこそこ参考になった。

笑うに笑えない 大学の惨状(祥伝社新書)

笑うに笑えない 大学の惨状(祥伝社新書)

大学にこんな学生が来るようになってしまった、とかいうことをおもしろおかしく紹介するような本とは一線を画し、大学を取り巻く環境が20年前、40年前とどのように変化したか、ということを説明する本で、受験世代の子どもを持つ保護者に対して、親が学生だったころとこんなに違うんですよ、ということを分かってもらい、息子・娘に無茶な要求をしないように、ということを啓蒙する本である。

自分が受験生であった20年弱前ともかなり様相が変わっているようで、浪人する人が激減しただとか、いわゆるGMARCHに行く人が増え(特に明治の人気上昇が著しい)、どうしても早慶でないと、というような人が減ったとか。

たとえば自分が代ゼミで浪人していたとき、どうしても慶応に入りたいからと、文学部・法学部・商学部・経済学部・総合政策学部などと、あらゆる文系学部を受けていた人が少なくなく、自分などは唖然としていたわけだが、最近はそんなことをする生徒はいなくなり、学びたい学部で大学をいくつか受ける、という受験の仕方をするようになったということである。本来そのほうがよいと思っていたが、いったいどういう変化によって学生が変わってきたのか、というのには興味がある(この本はどのように変わったかは詳しく書かれているが、どうして変わったのかはそんなに書かれていない)。

また、以前はいわゆる文系の学部では法学部が「潰しの利く」学部だとして一番人気があったが、最近はロースクールに行っても司法試験の合格率が2割強で、法学部に行っても実際は潰しが利かないと思われて敬遠されているそうで、逆に国際教養系の学部が人気だとか。確かに秋田の国際教養大は成功しているし、早稲田や明治を筆頭として国際教養系の学部を相次いで新設している。人文系にもかかわらず就職率も高いようだが、人文系の学部に専門性は期待していないので、やるならリベラルアーツ、かつ海外に単身留学してサバイブする能力がついた学生を採用したい、というのは納得。学生も真面目になったし、自分が学生だったころの感覚で語っちゃだめだなぁ。

あと、文III16組は全体で30人弱いたと思うのだが、そのうち今も大学で研究しているのは自分を含めて3人で、厳しいようである。大学に残っている人も、日本各地に散らばっているらしい……。

結局1次会だけで気がついたらほぼ終電で(最寄り駅まで帰れない人もいたが……)、みんな楽しく過ごす。ときどきこうやっていろんなバックグラウンドの人と話すとおもしろい。いろいろあったけどやっぱり自分は文IIIでよかったな、と思うのであった。