研究がお仕事!

石田敦子アニメがお仕事!」を少しずつ読んでいたのを、ようやく読了。

ただし、紙で買うと面倒くさいのでRenta! で1冊100円でチビチビと購入して読んでいた。いつも思うのだが、漫画自体を所有する欲求は自分にはすでにほとんどないので、これくらいの価格でで読める漫画がもっと増えてほしい (自分が子どもだったら、何回も繰り返して読みたいだろうし、また違うのであろうが)。

石田敦子を知らない人もいるかもしれないが、自分がアニメを熱心に見ていた中高生のころは割合有名なアニメーターだったと思う。リンク先の Wikipedia によると、作画監督をしていたのは「伝説の勇者ダ・ガーン」「勇者特急マイトガイン」「勇者警察ジェイデッカー」「魔法騎士レイアース」の4つだが、他にも多数の作品を手がけている。

この漫画、彼女の自伝風の漫画で、アニメーターを志してから独り立ちするまでを描いたものなのだが、やはりなにかを生み出すという点では研究とも共通しており、ときどき胸に突き刺さるものもあった。他人と比較せずオリジナルを生み出すことの重要性とか、やって当たり前でできないと責められる仕事の苦しさとか、プロとして仕事をするために必要な (教えられない) ものはなにかとか。続けたい人が続けられず、続けることから逃げた人が宿命のように戻ってくるとか、登場人物全員なにかすねに傷を抱え、苦しんでもがいて、それでも前に進んで行くところが圧巻である。

あまりネタバレにならないように書くが、こういうアニメの仕事でも、後進をどのように育てるか、というのが重大な問題で、全員が全員動画担当から原画担当に移りたいと思っていないとか、最初は小さいところではなくちゃんと教育してくれるスタジオに入ったほうがいいかもとか、なんだか身につまされるものがある。自分に関して考えると、自分の仕事を見て自然言語処理の研究をしたいと思ってくれる人が出てきてくれて、少なくとも2人の自然言語処理の研究者を育てることができたら、この分野に貢献することができたと思っていいのかな、と思った。

この作品が描かれたのは2004-2007年なのだが、作中の舞台はちょうどアナログからデジタルに移行する最中の話でもあり、なんだかノスタルジックな気持ちにもなる。あのころアニメを見ていた人、いまもアニメを見ている人みんなに、どれだけアニメを作る人が身を削って書いているのか (どれだけアニメを愛しているのか)、読んでもらいたいと思う。