原稿〆切は規定枚数を埋める〆切ではない

午前中、コーパス日本語学ワークショップの原稿の添削x2。そろそろ収束に向かっている気がする。

昼から LaTeX をしこしこと書く。Tikz-dependency でエッジの高さを変えたいのだが、edge unit distance を変えてもうまくいかない……。まあいいか。依存構造とか述語項構造を描くとき、これまで PowerPoint で作っていたのだが、PowerPoint より遥かに楽だなぁ。便利なものを作ってくれる人もいるものである。

午後、受験希望の人が訪ねてきてくれる。言語教育勉強会に興味があるそうだ。30分くらい話を聞いたり少し研究紹介をしたりして、あとは [twitter:@keiskS] くんや yu-s くんらにお任せする。結局教員の話より、実際に在籍している学生の話のほうが参考になるのである。修士論文で忙しい中対応してくれてありがたい。あと、既に成果が出ている話より、いままさに取り組んでいて、まだ答えが分からない、という話のほうが、研究のおもしろさが伝わるのではないかと思う。答えが分かっていない問題と本腰を入れて取り組むことこそが研究であって、教員が一方的に答えの分かっていることを解説するのは、大学院でやることじゃないし。

夕方もひたすら心を無にして LaTeX をこりこりと書き続ける……。取りかかってから完了するまで、5時間かかる。〆切まで時間がないから仕方ないが、同じ5時間を使うなら添削に使ったら4往復はできるので、ちょっと時間の使い方を再検討したほうがいいかもしれない。

学生によっては添削回数を最小にしたいのか、〆切直前まで全然送って来ないことがあるのだが、最後に原稿を持っていた人が負けというチキンレースをしたいならともかく、お互いの持っている目的関数が違うと往々にして不幸になる。教員としてはできるだけ原稿の質を高めて投稿したいだけで、添削回数を減らしたら原稿の質が上がる人ならお互いの目的が一致しているので問題ないのだが、そうでない場合は添削の回数を増やしたい力と減らしたい力が戦い合い、そもそも戦わなくていいところで無駄にエネルギーを使うのである。

だいたい往復する度に赤の入る場所は (ある時点から急速に) 減っていって、5-6回で収束するので、〆切前々日に原稿を送ってきてチェックを受けるのを1回で済ませようとするのではなく、〆切の2週間以上前にとりあえず全体が埋まったバージョン (規定の枚数の1-2割増し) を送ってもらって、2-3日に1往復できるくらいがお互いにとっていちばん負担が少ないのではないかな。

ときどきあるのは〆切3日前に半分くらいしか埋まっていない原稿を送ってきて、残り3日間徹夜で驚異的な集中力を発揮して全体を埋めて提出しようとするのだが (まだ最後しばらく没頭しようという心意気があるだけ偉い)、集中力を発揮するべきところは枚数を埋めるところではなく、埋めたあと原稿のクオリティを上げるところである。つまり、「〆切=全体を埋めていってページ数を増やしていって必要な規定枚数に到達したとき」と考えていると大間違いで、「〆切=全体を埋めたあと不要な文章を削ったり順番を入れ替えたりして減らしていって必要な規定枚数に到達するように調整したとき」であって、後者の通過点として前者があるので、前者のような考えで原稿を書いていたらちっとも質の高い論文が書けるようにならないと思うのである。

松尾さんの英語論文の書き方のページ、研究論文を書く学生の人は10回くらい読んだほうがいいと思う。(自分も30回は読んでいるだろうが)

とはいえ、無事に1本投稿完了。あと2往復くらいできたらよかったのだが、〆切もあるし、投稿してもよかろう、という水準 (=第4稿) には到達したし、あとは実際のポスターでしっかり説明する、という感じかな。