自然言語処理の研究における言語学の役割

朝から研究室の夏の勉強会

一応全部読んでみたが、どうなんだろう……。ちょっと自分は週明けのブートキャンプの準備が全然終わっていない(TA の人たちから「準備早くしてください」と言われている……ごもっとも)ので、自分の担当部分が終わったらブートキャンプの準備に戻りたいのだが、進捗が遅いようで明日の午後までかかるかもしれず。

個人的には Cross-Serial Dependencies in Dutch の章が一番おもしろかったのだが、ここはどうも飛ばすようだし、基本的には過去に発表した論文をベースに(大幅に)加筆修正しているらしく、言語学の基本的な知識がない人が突然読むのは厳しいだろうし、逆に言語学にある程度詳しい人にはちょっとあっさりしすぎていて、中途半端。自然言語処理的な話が載っているのは第9章だが、こういう話について知りたいならこの本でなくてもいいような……。

自分は言語学から「言葉の研究ってこんなに楽しいんだ」と思って入った口であり、自然言語処理の研究はそれからすると付け足しのようなものなのだが、逆に工学系の研究科にいるとプログラミングに興味はあっても言語学には興味がない人(興味があると言いつつ言語学の本は読んだことがない、もしくは読まない人を含む)のほうが多数派だったり、こんなおもしろい話なのに、紹介のされ方がいまいちで、読みたくなるような感じではないのが残念である。こういうところ、やっぱり総合大学のほうがいいかな、と思うことはある。

自然言語処理の分野で学振の書類書いたりするときも、言語学の話を知っていて書くのと、知らずに書くのとでは研究背景の深みが全然違うし、その研究のインパクトを述べるにしても、産業への応用だけではなく、言語学への波及効果ということも考慮することができるだろうし、特に博士後期課程に進学する人、在学中の人は言語学についても勉強することを強くお勧めする。たぶん、こういう言語学的なところを抜きにして研究すると、それって大学でやらなくてもいいよね、むしろ企業のほうがいいよね、という問題と常に対峙しなければならないだろう。自分も博士論文の公聴会のとき審査委員の Patrick Pantel さん(当時 Yahoo! Labs, 現在 Microsoft Research)から

「あなたがこれからもらうのは Doctor of Philosophy の称号なので、哲学的な質問を最後に一つさせてください。あなたの研究は、いったい自然言語処理言語学、もっと広く言えば人間にとって、どのような意味を持つのでしょうか」

と言われたし、他にも学生のときはよく企業の研究員の方々から「哲学的な問題とか言語学的な展開をきちんと踏まえて研究してほしい、単に実用的なだけの研究は企業でもできるので」という話をお聞きしたので、自然言語処理分野における博士論文の研究というのは、言語学的なインパクトも必要なものだと思うのである。

まあ、統語構造や意味(述語項構造)について研究しようと思うと、言語学的な話は避けて通れないので、もっとこういう本を勉強会で読んだ方がいいのかもしれない。自分が M1 のときは勉強会でたとえぱ「動詞意味論」

動詞意味論―言語と認知の接点 (日英語対照研究シリーズ (5))

動詞意味論―言語と認知の接点 (日英語対照研究シリーズ (5))

読んだりしたし、こういう話に対するアレルギーがないようにしたいなぁ。